Research Abstract |
(1)IAWQ活性汚泥モデルの低次元化モデル構成法の開発(研究分担者:伊藤博,研究協力者:中島裕一郎,井手裕貴):IAWQが公表している活性汚泥モデルは,高次の非線形微分方程式で表わされており,オンライン制御系設計に適していない.ここでは,特にASM1モデルをシステム制御の側面から再考し,制御にとって重要となる要素を抽出した低次元化モデルを導出した.具体的には,時定数の小さい動力学を無視し,相対的に値が小さいものを零と置き,非線形関数を線形近似することで,12の状態変数を5に,8つのプロセスを無酸素槽で3つに好気槽で4つに削減することができた。またこの時,すべての状態変数が測定可能であれば,モデルに含まれるパラメータが理論的に識別可能であることを証明した。さらに,フルスケールモデルによるシミュレーションにより,低次元化における仮定の妥当性の一部を検証した.(2)適応オブザーバ理論を用いたキャリブレーション方法と計測不能水質項目の推定法の開発(研究分担者:日高浩一):IAWQ活性汚泥モデルを現実のプロセスに適合させるためには,数多く(ASM2では70個程度)のパラメータをキャリブレーションする必要がある.また,モデルを用いて制御を行うことを目的とした場合には,計測不能な水質項目を観測可能な水質項目から推定することが望まれる.そこで,IAWQ活性汚泥モデルを,時変未知パラメータを含む線形系とみなし,時変適応オブザーバを適用することにより,未知パラメータおよび計測不能な水質項目の同時推定を行うアルゴリズムの開発に取り組んでいる.(3)IAWQ活性汚泥モデルに対する感度解析とパラメータ同定(研究代表者:大森浩充,研究協力者:佐藤丈):精細モデルに含まれるパラメータをすべて同定することは困難であり,パラメータも冗長であることが指摘されている.ここでは,ASM1モデルに対してパラメータ感度解析を行ない,プロセスにおいて重要なキーパラメータを特定し,それを同定するアルゴリズムを開発した.具体的にはASM1モデルにおいて19個のパラメータから9個のキーパラメータを特定することができた.さらに,同定結果の評価として,晴天・雨天・嵐時における流入下水の実データを用いて,特定されたキーパラメータが確かに主要であったことおよび同定結果が妥当であったことを確認した.(4)下水処理パイロットプラントを用いた総合実験と数値模擬実験計画の立案(研究分担者:長岩明弘,山中理,研究協力者:小原卓巳,吉澤直人,片山恭介):実際の下水処理パイロットプラントにおいて,水質センサー値の信頼性向上(DOセンサー,ORPセンサー)を達成し,水質センサー値(DO/ORP値)と規制水質値(NH4-N/NO3-N)の相関関係を理論的に調べ実験により確認した.さらに,ステップ応答試験を好気槽,無酸素槽で行ない,簡単なPI制御による制御結果を得た.
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