2001 Fiscal Year Annual Research Report
気泡塔型培養装置を用いた有用きのこ菌糸の高速大量培養技術の実用化
Project/Area Number |
13555229
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
河越 幹男 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (90043489)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
直江 一光 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 助教授 (00259912)
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Keywords | 気泡塔 / バイオリアクター / きのこ菌糸 / 液体培養 / 逆ミセル / 抽出 / 分離精製 / 蛋白質 |
Research Abstract |
きのこ菌糸を液体培養すると直径5〜20mm程度の球形ペレットを生成する場合が多い。培養経過をモニターするためには菌体量を測定しなければならないが,このような大粒子ペレット懸濁系では,直接サンプリング法で測定する場合,大量の培養液を採取しなければならず,事実上,不可能である。そこで,気泡塔型培養装置における大粒子菌体ペレット生成系における菌体濃度の測定法について検討した。従来,平行光束を用いた透過光強度による測定法があるが,この方法で測定できるのは微小粒子懸濁系であり,かつ,測定できるのは粒子表面積のみで,粒子濃度を測定することはできない。そこで,粒子濃度と平均粒子径が同時に測定できる線光束を用いた光透過法を考案した。平行光束の場合に測定できる物理量は透過光強度のみであるが,線光束の場合には光通過率と光の遮蔽ピーク幅の二つの情報が得られるので,数値シミュレーションを援用して,これら2つの測定値から粒子径と粒子濃度を求める方法を開発した。 次に,きのこが生産する有用物質の精製法について,タンパク質を分離対象物質として,検討した。AOT逆ミセルを用いたタンパク質抽出において、タンパク質の立体構造に着目し抽出前に極めて希薄なタンパク質変性剤で前処理を行い、低両親媒性分子濃度条件において抽出率が飛躍的に向上されることを明らかにした。また、本系を用いて加水分解酵素リパーゼを可溶化し、油脂の加水分解反応における有機溶媒など有機相の操作条件を明らかにした。さらに、逆ミセルを含む有機ゲルマトリックスを調製し、リパーゼによる油脂のエステル交換反応についても検討した。また、生体適合性を有する両親媒性分子の導入について検討した。非イオン性両親媒性分子であるショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)により形成された逆ミセルを用いて、種々のタンパク質の抽出を行ない、最適な操作条件を明らかにした。また、生体適合性両親媒性分子としてポリグリセリンエステルについても検討し、タンパク質濃縮媒体として有用であることを示した。さらに、本系における酵素の安定性を評価するために、加水分解酵素リパーゼを固定化してエステル合成反応を行い、生体成分であるレシチン系と同等の高い酵素活性を得ることに成功した。
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Research Products
(15 results)
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[Publications] 河越幹男, 出口正揮, 野田秀夫: "レーザー透過法による菌体ペレット濃度測定と気泡塔によるきのこ菌糸の増殖特性"化学工学会福井大会(福井大学)要旨集. A115 (2001)
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[Publications] 河越幹男, 出口正揮, 木原澄人, 野田秀夫: "レーザービーム透過法による気泡塔内のきのこ菌糸体ペレット濃度の測定"化学工学会第34回秋季大会(北海道大学)要旨集. H218 (2001)
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[Publications] 河越幹男, 木原澄人: "レーザー透過法による気泡塔内の粒子ホールドアップと粒子径の同時測定"化学工学会第67年会(福岡工業大学)要旨集. L213 (2002)
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[Publications] Naoe, K., Ohsa, T., Kawagoe, M., Imai, M.: "Esterification by Rhizopus delemar lipase in organic solvent using sugar ester reverse micelles"Biochemical Engineering Journal. Vol.9. 67-72 (2001)
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[Publications] Konishi, T., Naoe, K., Kawagoe, M., Imal, M.: "Enzyme stability and its extraction behavior in reverse micellar system"Abstracts of 11th World Congress of Food Science & Technology(Seoul, Korea). 165 (2001)
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[Publications] 太佐友美, 直江一光, 河越幹男, 今井正直: "シュガーエステル逆ミセル系におけるタンパク質の抽出と酵素反応"化学工学シンポジウムシリーズ「高機能界面・分子集合体の基礎構築と応用分野の新展開」(化学工学会編). 153-161 (2001)
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[Publications] 俵元友子, 直江一光, 河越幹男, 今井正直: "ポリグリセリンエステル分子集合体のタンパク質濃縮及び酵素反応媒体としての利用"化学工学シンポジウムシリーズ「高機能界面・分子集合体の基礎構築と応用分野の新展開」(化学工学会編). 177-184 (2001)
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[Publications] 小西泰二, 直江一光, 河越幹男, 今井正直: "タンパク質の立体構造安定性と逆ミセル有機相への抽出"化学工学シンポジウムシリーズ「高機能界面・分子集合体の基礎構築と応用分野の新展開」(化学工学会編). 162-169 (2001)
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[Publications] 直江一光, 小野千晶, 村田昌代, 河越幹男, 今井正直: "逆ミセル有機相からのタンパク質回収における初期水相への低濃度グアニジウム塩による前処理効果"化学工学シンポジウムシリーズ「高機能界面・分子集合体の基礎構築と応用分野の新展開」(化学工学会編). 170-176 (2001)
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[Publications] 小西泰二, 直江一光, 河越幹男, 今井正直: "タンパク質構造の安定性と逆ミセルへの可溶化挙動"化学工学会第66年会(広島大学)要旨集. H107 (2001)
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[Publications] 遠山麻依, 太佐友美, 直江一光, 河越幹男, 今井正直: "シュガーエステル逆ミセル有機溶媒によるタンパク質の抽出挙動"日本食品工学会第2回年次大会(ピアザ淡海,大津). PA-17 (2001)
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[Publications] 山田有香, 粟津沙織, 直江一光, 河越幹男, 長山和史, 今井正直: "逆ミセルを用いたリパーゼによる油脂の加水分解における有機溶媒条件"日本食品工学会第2回年次大会(ピアザ淡海,大津). PA-18 (2001)
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[Publications] 長山和史, 多田佳織, 永野君香, 福山可奈, 直江一光, 今井正直: "有機ゲルマトリックスに固定化したリパーゼによる油脂のエステル交換"日本食品工学会第2回年次大会(ピアザ淡海,大津). PA-19 (2001)
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[Publications] 小西泰二, 直江一光, 河越幹男, 今井正直: "逆ミセル抽出におけるタンパク質立体構造に留意した抽出挙動の改善に関する基礎的検討"化学工学会第34回秋季大会(北海道大学). X218 (2001)
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[Publications] 遠山麻依, 太佐友美, 直江一光, 河越幹男, 今井正直: "シュガーエステル逆ミセル有機溶媒による高分子量タンパク質の抽出挙動"化学工学会第67回年会(福岡工業大学). J215 (2002)