Research Abstract |
昨年度までに,新たに開発したCCDカメラを用いた計測器を用いることで,短時間のうちに歯列全体を含む片顎模型の形状の収集が可能になった.これにより従来,単冠のクラウンや三歯連結のブリッジといった限られた範囲での補綴物の製作だけでなく,今回の新たに試作した計測器により,もっと広範囲な形状の取り込みをおこない,歯科で日常的に行われている記録模型の採取と手作業による寸法測定しかなかった歯列の三次元的な評価を,試作計測装置を用いて数値化し,コンピュータを用いた定量的な解析評価を行うことができるようになる.また,こうしたデジタル化されたデータとして記録されることで,ネットワークを通じた模型のやり取りを容易に行うことができる.そこで,今回はデータの収集から,画面上での表示,任意の位置測定ができるソフト開発を行った.本計測装置を用いて片顎模型の計測を行う場合,歯列の外側方向と内側方向のそれぞれ二方向から9回ずつ角度を変えながらデータを収集している.また,各方向からの計測時には,ステージの移動により模型表面を200μmピッチでデータが収集される,そのため,18種類のお互いに重複する点群が計測されるが,最終的には,それぞれの計測方向別に重み付けをして最適化した三次元データが出力される.計測に要する時間は,約4分で18方向全てのデータ収集が終了し,その後の処理も含めて約5分で計測を終了する事ができた.計測後のデータは,模型を回転させ多方向からデータを収集していることで,死角となる部分のないデータを得ることができていた.続いて,新たに開発した計測データの三次元画像表示ソフトと,画面上で指定する2点間,或いは2面間の三次元的距離測定ソフトにより計測した模型の特徴点の測定を行った.得られたデータを,実際の手作業でマイクロメータを使って測定したデータと比較したところ,歯肉辺縁部などの凹形状では1mm以上の誤差を生じている部分があった.また,咬頭頂などの凸形状に於いても300μm程度の誤差が認められる場合があった.これは,部位によっては最適化処理による平均化の工程で形状が不鮮明になってしまい,本来の計測位置を画面上で捉えられていないことが考えられ,今後,この最適化処理のアルゴリズムを検討しなおす必要があることが分かった.
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