2002 Fiscal Year Annual Research Report
環境に配慮したこれからの反応染色衣料のあり方に関する研究
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13558007
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
岡田 安代 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (90118729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檜原 利夫 ダイスタージャパン株式会社, テクニカルセンター, 所長(研究職)
高野 梓 大妻女子大学, 短期大学部・家政学部, 助手
鞠子 典子 大妻女子大学, 家政学部, 助手
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Keywords | バット染料 / 耐光性 / 光増感 / 光酸化 / 光還元 / 内部変換 / 汗-光堅牢性 / アゾ染料 |
Research Abstract |
7種のアントラキノン系及び2種のチオインヂゴ系パット染料で染色したセルロースフィルムの光安定性について調べた。光酸化され易さ(k_0)はローズベンガル溶液中に浸漬したセルロースフィルムを露光することで求めた相対退色速度で示した。また、光増感性(f)は、バット染料で染色したフィルムを更にアミノピラゾリン系アゾ反応染料(Yellow P)(ビニルスルホン系)で染色し、湿潤状態下で露光することによるYellow Pの相対退色速度から求めた。その結果、k_0は反応染料に比べるとかなり小さかったが、fはほぼ同じだった。綿織物の耐光性は、log(f k_0)と密接な相関を示した。この事実は、乾燥状態でバット染料染色物を露光すると、主に光酸化退色だけを生じていることを示している。嫌気性条件下のDL-マンデル酸溶液中での露光では、光還元だけを生じる。バット染料の色相変化は、酸性のロイコ化合物の生成であり、再酸化により元の染料の色に戻る。高い光還元性を示すバット染料は、乾燥条件下での長時間露光により、基質の表面部分で光酸化を、内部で光還元を生じていることを示す上述の現象と同様の色相変化を示した。アントラキノン系バット染料の光退色の性質は、カルボキシル基の励起三重項(T_1(nπ^*))状態に帰せられる。量子収率T_1(ππ^*)は励起一重項状態の内部変換により大変小さい。小さな吸光係数をもつカルボキシル基のnπ^*は、大きな吸光係数を持つアントラキノン系のππ^*吸収で隠されるので、最高の耐光性をもつバット染料の光退色は大変小さい。これがバット染料が高い耐光性をもつ理由である。 更に、H酸系とγ酸系アゾ反応染料を用いて光増感性と汗-光堅牢性を調べた。H酸系のものは中位の光増感性と、実用レベルとしてはやや低い汗-光堅牢性を示した。一方、γ酸系のものは、低い増感性と良好な汗-光堅牢性を示したが、光酸化性のみをみると相当低いレベルであった。γ酸系アゾ染料は欠点よりも長所を利用し、H酸系は中間で妥協しているわけである。 紫、赤、オレンジ、黄色を除いたλ_<max>600nm以上を持つアントラキノン系バット染料は、エネルギーギャップ則による高い量子収率の内部変換が起こる。我々は、内部変換の効率を上げる分子メカニズムあるいは内部変換を促進する方法を追求した。染料の光が関連した問題を解決する鍵は、内部変換の効率を上げる分子機構を見出すことと結論できる。
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Research Products
(1 results)