2002 Fiscal Year Annual Research Report
西アジア初期遊牧民の墓制に伴う「擬住居」「擬壁」の研究
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13571037
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤井 純夫 金沢大学, 文学部, 助教授 (90238527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 和也 (財)シルクロード研究所, 常勤研究員
三宅 裕 東京家政学院大学, 人文学部, 助教授 (60261749)
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Keywords | 西アジア / 遊牧民 / ヨルダン / 墓制 / 新石器時代 / 沙漠 / 擬集落仮説 |
Research Abstract |
本研究代表者の提唱する「擬集落仮説(pseudo-settlement hypothesis)」の具体的検証のため、ヨルダン南部の沙漠地帯に位置する初期遊牧民の葬祭遺跡、カア・アブ・トレイハ西遺跡(Qa' Abu Tulayha west)の発掘調査を初年度に継続して行った。 本年度は、第4層(後期新石器時代)の400番台擬壁ケルン墓群(BC-400s)のうちの2基、500番台擬壁ケルン墓(BC-500s)のうちの4基、600番台擬壁ケルン墓(BC-600s)のうちの3基、計9基を発掘した。その結果、前年度に判明していたケルン墓の構造的変化を更に数百年延長して把握することができた。特筆すべきは、500番台擬壁ケルン墓の後半から被葬者層が拡大し、部族長レベルの埋葬から氏族長レベルの埋葬への変化を確認できたことである。後期新石器文化末における被葬者層の拡大は、レヴァント南部銅石器時代の「チーフダムモデル(chiefdom model)」とはまったく相反するものであり、大きな問題を投げかけることとなった。また、600番台擬壁ケルン墓ではケルンマウンドに覆われていた「擬壁」が外部に併置されるようになり、第3層の円環状「擬壁」ケルン墓群への推移を具体的に捉えることができた。本年度の作業によって、擬住居タイプのケルン墓群(北西遺構群)から、擬壁タイプのケルン墓(南西遺構群)、さらには、円環状連結擬壁ケルン墓群(第3層)へと続く一連の流れが明らかになり、「擬住居」「擬壁」問題に関する基礎的な枠組みを設定できた。 こうした発掘作業と並行して、遺跡周辺地域の分布調査も行った。その結果、カア・アブ・トレイハ西遺跡の「擬住居」「擬壁」に類する遺構を持った複数の遺跡を確認した。また、これらに前後する時期の型式と思われる特異な埋葬遺構も多数確認した。これによって、カア・アブ・トレイハ西遺跡の発掘成果をより広い視野から相対的に位置づけることが可能になった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Fujii, S.: "A Preliminary Report of the 1995-2002 Surveys of the al-Jafr Basin, Southern Jordan"Annual of the Department of Antiquities of Jordan. 47. (2003)
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[Publications] Fujii, S.: "Qa' Abu Tulayha West, 2002 : An Interim Report of the Six and Final Season."Annual of the Department of Antiquities of Jordan. 47. (2003)
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[Publications] Fujii, S.: "Pseudo-Settlement Hypothesis : Evidence from Qa' Abu Tulayha West in Southern Jordan"Archaeozoology of the Near East. 5. 181-194 (2002)
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[Publications] 藤井純夫: "先史遊牧民のアクロポリス:カア・アブ・トレイハ西遺跡の第6次調査"平成14年度第10回西アジア発掘調査報告会報告集. 37-44 (2003)
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[Publications] 岡田保良: "都市の生成:ウルクディアスポラ"建築雑誌. 117. 12-18 (2002)
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[Publications] 藤井純夫: "バーディアから見たウルク・ワールド・システム論"西アジア考古学. 3. 55-56 (2002)