2002 Fiscal Year Annual Research Report
樹上性巻貝の左右二型現象と鏡像集団の進化生物学的研究
Project/Area Number |
13575005
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
浅見 崇比呂 信州大学, 理学部, 助教授 (10222598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 一佳 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80251411)
青塚 正志 東京都立大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (40106604)
吉村 仁 静岡大学, 工学部, 教授 (10291957)
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Keywords | 左右極性 / 螺旋卵割 / 形態形成 / 左右二型 / 巻貝 / カタツムリ / 雌雄同体 / タイ |
Research Abstract |
タイの東部(Chantaburi)および西南部(Surat Thani)において、タクミマレイマイマイ(Amphidromus atricallosus)の集団動態を標識再捕法により追跡した。 東部地点では、2年間にわたり全387個体に標識し、集団サイズは約500と推定された。西南部では、2年間にわたり全1163個体に標識し、集団サイズは約1000と推定された。2地点の双方において、左右二型の共存が確認された。東部地点では、右巻頻度が90%前後であるのに対し、西南部地点では27%にとどまる。しかも、2回の夏の調査において、統計的に有意な頻度の変化が、どちらの地点においても検出された。これらの地点における頻度の変動がランダムに生じ、方向性のない変動であるのか、または周期的な変動であるのかは、今後の追跡により確認する必要がある。それにより、左右二型の頻度が平衡状態で維持されているのか否かが判明することになる。 二つの地点の間で、殻のサイズが異なるだけではなく、殻高で標準化した形が有意に異なっていた。しかも地点の間での形の異なり方が、殻の大きさに依存して有意に変化していた。西南部地点では、左右二型の間でサイズは異ならないが、殻高で標準化した形が有意に異なり、左巻が右巻より幅が広いことが明らかである。同一集団の右巻と左巻は、遅滞遺伝の特徴により、核ゲノムの遺伝子プールを共有することがわかっている。したがって、同一地点で観察される左右二型の形態の差異は遺伝的な差異では説明できない。これは個体発生の左右極性それ自体が殻の形態形成過程を変更することを示している。実際に左右二型が同一集団の遺伝子プールを共有していることを確認するには分子マーカを用いる必要があり、それは今後の課題である。
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