2003 Fiscal Year Annual Research Report
南半球におけるタバコ属植物(ナス科)進化の統合研究
Project/Area Number |
13575009
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Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
伊藤 元己 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (00193524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷部 光泰 基礎生物学研究所, 教授 (40237996)
喜多 陽子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (60345262)
青木 誠志郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (10334301)
朝川 毅守 千葉大学, 理学部, 助手 (50213682)
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Keywords | タバコ属 / 南半球 / ゴンドワナ / 分子系統 / 生物地理学 / 分類 / 複二倍体 / 新種 |
Research Abstract |
本研究では、生物分類学および生物地理学における従来の方法、つまり複数の植物群を解析し、分布変遷パターンを比較していく方法から転換し、1つの代表的な植物群で種分化や分布変遷パターンの原動力となる機構について、詳細に解析することを目指した。本研究で新たな試みの対象に選んだタバコ属は、ナス科の植物であり,南アメリカに37種,オーストラリア・南太平洋に20種,アフリカに1種が分布するという典型的な南半球分布を示す.本調査ではこれまでに、南米ボリビア・アルゼンチン・チリ、またオセアニア地区よりオーストラリア、ニューカレドニア、ニュージーランドの現地調査をおこなった。その結果以下のような研究結果、実績を手にしている。まず、分類学的実績として、採取したタバコ属植物の内、1つの個体群を詳細に調べたところ、本個体群が新規な種であろうことを確認した。これは分子系統学・集団遺伝学的な解析とともに、生育条件、形態的な観察をおこなった結果であり、現在、論文の発表準備中である。次に生物地理学的実績として、10年以上前に行われたJT(当時専売公社)による調査との比較を行い、分布の時間的な推移を解析した。その結果いくつかの種(Nicotiana kawakamii, N. acaulisなど)が絶滅に瀕している可能性が示唆されることが分かった。これらの植物の状態についてさらなる調査が必要と思われる。さらに分子系統学的な実績として、従来異論のたえない嗜好品としての煙草の原料であるN. tabacumの起源を調べあらたなる研究結果を得た。N. tabacumは復二倍体であり父親系統、母親系統の詳しい解析が待たれている。我々の解析の結果、母方のN. sylvestrisとN. tabacumの遺伝的な差異にくらべ、父方の候補である種(N. tomentosiformis, N. kawakamii, N. tomentosa, N. otophora)などとN. tabacumの差異が、大変大きいことが示された。このことは父方系統の植物については現在みつかっている種以外に、新しい植物が存在する可能性があることを示唆している。この点においても、南米を中心としたさらなる詳しい調査の実施が必要と考えられる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Seishiro Aoki, Koichi Uehara, Masao Imafuku, Mitsuyasu Hasebe, Motomi Ito: "Phylogeny and Divergence of Basal Angiosperms Inferred from APE TALA3- and PISTILLATA-Like MADS-Box Genes"Journal of Plant Research. (accepted). (2004)
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[Publications] 角谷直人, 川床邦夫, 青木誠志郎: "アルゼンチン・ボリビアのタバコ属野生植物調査(補)"タバコ史研究. 85. 3976-3979 (2003)