2002 Fiscal Year Annual Research Report
アジアにおける日本住血吸虫の起源と共進化に関する研究
Project/Area Number |
13576008
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Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
吾妻 健 高知医科大学, 医学部, 教授 (40117031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 啓久 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (10128308)
嶋田 雅暁 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70124831)
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Keywords | アジア / 住血吸虫類 / 共進化 / 28S / ITS2 / CO1 / 塩基配列 / 分子系統樹 |
Research Abstract |
Schistosoma属の起原を考える上で、Schistosomatidae科におけるSchistosoma属の位置を調べることは、重要である。これまで哺乳類寄生性住血吸虫の4属については良く調べられてきたが(Snyder & Loker,2000)、もう一つの哺乳類寄生性Bivitellobilharzia属についてはこれまで全くデータがなく、この属とSchistosoma属の関係については未知であった。前年度は、スリランカの象から得たBivitellobilharzia属の一種B.nairiの核DNAの28Sリボソーム遺伝子領域について報告したが、今回は核DNAのもう一つのリボソーム遺伝子領域ITS2およびミトコンドリアDNAのCO1領域の塩基配列を決め、他の哺乳類寄生性4属(塩基配列はgeneBankから得た)との類縁系統関係を解析した。まず、近隣結合法を用いて、核DNAのITS2領域を解析したところ、前年度の結果と同様にB.nairiはSchistosoma属/Orientobilharzia属のクラスターともっとも近いアウトグループという類縁関係を有することが分かった(Orientobilharzia属はSchistosoma属内に入り、Schistosoma属のシノニムと考えられているが、本研究においてもそれを確認している)。この結果は最大節約法においても同様であった。一方、CO1領域では、両解析法においてB.nairiはSchistosoma属/Orientobilharzia属のクラスターの外ではなく、中に入る結果になった。この核DNAとミトコンドリアDNAの遺伝子領域で得られた結果の食い違いの理由はまだ明らかではないが、CO1領域では塩基置換が飽和状態になっているか、あるいは配列の長さが短すぎるので、遺伝的距離が過小評価されたということが考えられる。今後全長のCO1を決定する予定である。また本研究では、Schistosomatidae科全体を見てみると、Snyder & Loker(2000)の結果と異なり、哺乳類寄生性の5属がmonophyleticになるという結果が得られた。しかし、得られた系統樹は解析方法によっては幾分不安定になる場合もあるので、今後とも継続して解析していきたい。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.H.Le, P-F.Humair, D.Blair, T.Agatsuma, D.T.J.Littlewood, D.P.McManus: "Mitochondrial gene content, arrangement and composition compared in Africa and Asian schistosomes"Molecular & Biochemical Parasitology. 117. 61-71 (2001)
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[Publications] Takeshi Agatsuma: "Molecular evolutionary history of Schistosoma japonicum in Asia"Proceedings of the 7th Korea-Japan Parasitologists' Seminar (Forum Cheju-7). 11-21 (2001)
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[Publications] T.Agatsuma, M.Iwagami, C.X.Liu, R.P.V.J.Rajapakse, M.Mondal, V.Kitikoon, et al.: "Affinities between Asian non-human Schistosoma species, the S. indicum group, and the Africa human schistosomes"Journal of Helminthology. 76. 7-19 (2002)
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[Publications] 吾妻美子, M.M.H.Mondal, A.Guevara, 石上盛敏, 石上祐子, 吾妻健 et al.: "東南アジア及び南米の家畜における寄生虫感染症の病理組織学的研究"高知学園短期大学紀要. 第33号. 125-133 (2002)
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[Publications] M.Okamoto, C.T.Lo, W.U.Tiu, D.Qui, P Hadidjaja, H.Sugiyama, T.Agatsuma, et al.: "Phylogenetic relationships of snail hosts of the genera Oncomelania and Tricula inferred from the mitochondrial 12S RNA gene"Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene. 第31巻第1号(in press). (2003)
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[Publications] 吾妻健: "アジアにおける日本住血吸虫の起源と進化 第57回日本寄生虫学会西日本支部大会と第56回日本衛生動物学会西日本支部大会の記録『虫の知らせ』"三恵社(株). 448 (2002)