2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610022
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
森 雅秀 金沢大学, 文学部, 助教授 (90230078)
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Keywords | チベット絵画 / タンカ / 仏教美術 / マンダラ / 集会樹 / 画像データベース / イコノグラフィー / 寺院構造 |
Research Abstract |
本研究は、チベットの仏教絵画を対象にその図像内容の解明と様式の確定を行うことを目的とする。そのために、まずはじめにチベット内外に残されている数多くのタンカと、チベット文化圏に残る主要な仏教寺院の壁画を対象に、画像データベースを構築した。そして、これをふまえて図像上の主題の特定と、様式史の変遷の解明を行った。2年間という限られた期間であったため、第一段階の画像データベースの構築を優先的に進め、その作業は現在も継続中である。これにもとづく個別的な研究成果をいくつかの著書、研究論文等のかたちで発表してきたが、図像の主題や様式に関する総合的な研究成果は、さらにこれから随時公表する予定である。 研究成果報告書では、本研究の基礎資料であるチベット仏教美術のデータベースの一部を公開した。具体的には、アメリカ合衆国のShelly&Donald Rubin Foundationによって運営される"Himalayan Art Project"がWeb上で公開するタンカを中心としたチベット仏教美術の基本データと、過去およそ10年間に欧米から刊行されたチベット仏教美術に関する主要な図録類から抽出したデータである。 個別的な作品についての研究として、チベット仏教絵画の独特の形式である「集会樹」を取り上げ、図像内容の解明と、宗教実践との関係を明らかにした。また、インドの建築儀礼に起源を持つ「ヴァーストゥナーガ」という図画についての考察を行った。密教文献に含まれるヴァーストゥナーガに関する記述を集成し、この図画が宇宙論的な意味を持つこと、その伝統がネパールやチベットでは近年に至るまで維持されていることを明らかにした。
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[Publications] 森 雅秀: "集会樹にみられる宗教実践とイメージ"金沢大学文学部論集 行動科学・哲学編. 23. 63-98 (2003)
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[Publications] 森 雅秀: "インドの不空羂索観音像"佛教藝術. 262. 43-67 (2002)
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[Publications] 森 雅秀: "ヴァーストゥナーガに関する考察"東京大学東洋文化研究所紀要. 142. 219-263 (2003)
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[Publications] 森 雅秀: "密教文献に説かれるヴァーストゥナーガ"高野山大学密教文化研究所紀要. 16. 19-47 (2003)
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[Publications] 立川武蔵, 森 雅秀他: "マンダラ:チベット・ネパールの仏たち"国立民族学博物館. 111 (2003)