2002 Fiscal Year Annual Research Report
祭と国家の比較宗教学的調査研究-日本近代の地域性と脱地域システムを中心に-
Project/Area Number |
13610029
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
関 一敏 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50179321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹沢 尚一郎 国立民族学博物館, 博物館民族学研究部, 教授 (10183063)
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Keywords | 祭 / 離島 / 国家 / 社会変化 / 観光資源 |
Research Abstract |
本研究は、維新期から現在にいたる日本近現代史上の三点(明治初期、第二次大戦前後、高度成長期以後)を中心とする時系列の軸と、現代の都市と農山村、さらには島嶼部の祭の調査研究という現在時の軸からなっている。初年度は、(1)対馬の民俗調査、(2)これにかかわる文献資料収集、(3)全国版図の他地域との比較を可能にする文献資料収集、の三点をおこなった。対馬東部の一漁村に地域を限定し、年中行事の全体像、社会変動と過疎化等々の集中調査を行った。主として第二次大戦以降の、法・教育・流通といった国家規模のシステムのなかで離島の経験してきた祭りの変動過程を(1)によって、又(2)の文献資料によってそれ以前の時代相をたどった。 平成十四年度はこれをふまえて、以前からおこなってきた博多山笠・椎葉神楽調査資料をもとに、離島漁村・都市・山村の地域の祭りの史的展開と現在の比較対照をこころみた。そのプロセスにおいて、いわゆる祭りの観光化現象も、たんなる伝統の衰退ではなく、現在の状況下での生活戦略の一環であること、しかし観光資源の乏しい離島-漁村の命運はこれと別の視角を必要としていること、等の予測があり、これを明らかにするためにもう一つの対象として赤米の行事で知られる対馬南端の豆酘調査を行った。頭人たちが,定の特権的家系に属すること、天道信仰をめぐる修験の介在、豆酘寺観音堂と多久頭神社の神仏習合的性格、渡来の古代的赤米といった史的深度の深い重層性をもちながら、行事そのものが生業・イエ意識・生活環境の変貌とともに持続困難であることがその特徴である。よって県ならびに国の無形民俗文化財指定を受けつつも、(1)担い手そのものの不足と(2)宗教性へのつよい固執がたんなる観光化戦略を妨げている。今回のプロジェクトではこの祭に行政と民俗の主題をよみこむにとどめるが、次期プロジェクトでは明治初期神仏分離をふくめてこの地の調査研究の深化をはかることになる。
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Research Products
(1 results)