2003 Fiscal Year Annual Research Report
薬師寺最勝会の形成過程の研究-儀礼・音楽における伝承・創造の視座から
Project/Area Number |
13610056
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
澤田 篤子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00101262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猿谷 紀郎 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (00324880)
寺尾 正 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (90163899)
古坂 紘一 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (50116175)
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Keywords | 仏教儀礼 / 声明 / 論義 / 最勝会 / 薬師寺 / 勅会 |
Research Abstract |
1)現行勅会の調査:現行の儀礼のうち、古式による勅会の形態を保持しているのは比叡山法華大会であり、この調査を10月4日を薬師寺僧侶と共に実施し、比叡山の僧侶との意見交換を行った。 2)最勝会の再構成および厳修:最勝会関連の法会の分析から最勝会の次第を再構成し、さらに表白、経釈、各種論義等の文言を再構成し、4月26日薬師寺大講堂にて最勝会を復興厳修した。 3)宗教芸術としての最勝会の舞台上演:儀礼を総合的な芸術とみなし、その本有的な創造的側面を強調して、研究分担者の猿谷紀郎が作曲・音楽監督となり、11月1日に東京紀尾井ホールにて復興最勝会の舞台上演を行った。本来7日間13座にわたって行われた最勝会を2時間弱の内容に凝縮し、その音楽性、芸能性が十分表現できるように構成し、音楽化を行った。なおこの上演は平成15年度芸術祭参加としたが、「伝統と創造の調和を目指すという企画の意図」と「宗教、音楽、美術、演劇などの融合した時空間と言える法会の魅力を見事に伝えた」との理由で芸術祭音楽部門大賞を受賞した。 薬師寺は中古の度重なる災禍により史料そのものが少なく、最勝会関連の直接的史料は極めて限られていることは当初より予想された上での研究であったが、周辺的な史料の解明から、その姿を描き出し、実際に法会として勤修することができた。本研究は「成立過程」の研究であるが、最勝会等、儀礼は時代や宗派の要請に応じて様々にその姿を変えてきており、単に天長7年(830)の最勝会の始修に至るまでの経緯のみが成立過程ではなく、その時代時代において適応させていく、そのすべてが成立過程といえる。本研究課題の一つである最勝会の復興については、その実現に至る全過程がまさに「平成の最勝会」の成立過程でもあった。薬師寺では最勝会を年中行事として実施するが、今後、年中行事の儀礼として定着し、大衆に受容されていく過程の観察を計画している。
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Research Products
(2 results)