2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610070
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
加須屋 誠 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (60221876)
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Keywords | 死 / 説話 / 六道絵 |
Research Abstract |
本研究は、かつてわが国古代〜中世期の人びとが心中に思い描いた「死のイメージ」--いかに他者の死を哀しみ悼み、また、自己の死を怖れつつも受け入れたのか?--の歴史的変遷を美術史学の立場から考察しようと企てるものである。本研究は次の三つの柱により構築される。(A)物語のなかの「死のイメージ」(六道絵など仏教説話画に描かれたイメージ解釈)、(B)儀礼のなかの「死のイメージ」(臨終行儀など仏教儀礼における絵画・彫刻など視覚イメージの機能分析)、(C)社会のなかの「死のイメージ」(肖像画など視覚媒体による故人の顕彰の社会構造分析)。以上、三つの柱の統合の上に、共同幻想とも呼ぶべき仮想的なイメージの問題が社会構成員一人ひとりの現実的な「死」の問題と深く関わることが明らかにされる。 上記のテーマのうち、本年度は特に(A)に関する研究が大きく進展した。すなわち、二河白道図・聖衆来迎寺本六道絵・京都国立博物館ほか分蔵病草紙・地獄極楽図屏風・山越阿弥陀図についての研究論文(1990〜2000年間に学会誌や大学紀要等に既発表)に新たに全面的な加筆訂正を施し、論文集として出版(『仏教説話画の構造と機能-此岸と彼岸のイコノロジー-』中央公論美術出版・2003年3月刊)。また同書の序論では古代〜近世初期に至る死のイメージを概観し、そこでは肖像画等についても多く言及。また最終章は「臨終行儀の美術」と題し、死の儀礼を分析。これによって(B)(C)に関する研究も進展をみた。 ほかに論文形式ではなく、新聞紙上にコラム連載というかたちで死へと至る老いの問題を取り上げ論じた(「老いの図像誌-仏教美術十選-」日本経済新聞2002年10月4日〜21日)。多くの読者から投書や問い合わせがあり、その反響ゆえに、研究の社会的な貢献を幾ばくか果たし得たと思う。
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Research Products
(1 results)