2002 Fiscal Year Annual Research Report
把持運動における下位運動成分間の協応関係に関する研究
Project/Area Number |
13610078
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
工藤 信雄 新潟大学, 人文学部, 助教授 (10234452)
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Keywords | 視覚座標 / 視覚-身体座標変換 / 運動制御機構 / 把持運動 |
Research Abstract |
目標物まで手を伸ばす視覚到達運動や把持運動などの随意運動を実現するには,対象となる物体の3次元位置や物体の壊れやすさといった属性を視覚系で分析(視覚座標)し,それを筋肉の長さや関節角といった運動プログラム(身体座標)に変換する必要がある。このプロセスは視覚-身体座標変換と呼ばれ,随意運動の制御において脳が解かなければならない問題の1つとされている。本年度は,到達運動や把持運動などのwithin-reach内での運動ではなく,歩行運動を取り上げ,視覚座標と運動座標との対応を実験により検討した(平成14年度日本心理学会第66回大会発表)。一般に,前額面に提示された2標的間の距離は,物理的に等距離であっても,奥行き方向に提示されるとその距離が過小視されるという視空間知覚の歪みが生じる。しかしながら,目隠し歩行では,前額面・奥行き方向とも2標的の位置に正確に定位できるという知覚系と運動系での不一致が生じる。しかし,このパラダイムは,知覚課題では一定の観察位置から得られた視空間表現に基づいているが,運動課題では身体が標的に向かって移動しているという問題点を有している。本研究では,観察点を固定するとともに,標的の位置ではなく長さを再現してもらうことにより知覚系と運動系との対応を検討した。実験の結果,従来の研究と同様,知覚課題では奥行き方向の過小視が観察されたが,標的間の長さを被験者に歩行で再現してもらったところ,知覚課題同様,奥行き方向に提示された2標的間距離は,前額面提示に比較し一貫して短く再生された。この結果は,標的に直接身体移動する従来の研究結果とは異なり,知覚系と運動系とが類似した視空間についての内部表現を共有していることを示している。このような錯覚事態に対する視覚系と運動系の問題は,到達運動や把持運動でも近年あつかわれており,次年度以降の研究課題である。
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