2003 Fiscal Year Annual Research Report
音の時間情報変動による聴覚情報の変化およびその知覚に関する研究
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13610079
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
赤木 正人 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (20242571)
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Keywords | 歌声 / 基本周波数 / F0動的変動成分 / 聴神経発火パターン / 蝸牛神経核 / 球状叢状細胞 / 位相同期特性 / entrainment特性 |
Research Abstract |
本研究の究極の目的は,波形に含まれる時間情報の変化,特にミクロからマクロまでの揺れに対する人間の聴覚特性を調べ,聴覚系の生理学的機能との対応関係を得る,また,得られた知見をもとに人間工学的な応用をはかることにある.この目標のもと,今年度は次の検討を行った. (1)歌声に含まれる時間情報変動に起因する声質の変化 自然な歌声合成を行うには,歌声の基本周波数(F0)の特徴的な動的変動およびスペクトルを制御できるモデルが必要である.本年度は,(1)F0コントロールモデルの精緻化,および,(2)歌声中の「ゆれ」と「歌声らしさ」の印象に関連する研究を行った. (1)については,様々なジャンルの歌声のF0にフィッティングを行い,モデルパラメータ値の改善に取り組んだ.その結果,有意に歌声の自然性が向上した.また,(2)については,歌声らしさ知覚を説明するための三層構造モデルを提案し,歌声らしさに関連する基本的心理量と基本的心理量に関連する物理量の検討を行った.この結果,ゆれは「歌声らしさ」の印象に最も関係する基本的心理量であること,ゆれの知覚に関連する物理量はF0の変動とこれと同位相で変化するスペクトルのAM, FM変調であることが明らかとなった.これらの結果を歌声合成システムに組み込み.楽譜と歌詞の朗読音声から歌声の合成を試みた結果,自然な歌声に匹敵する合成歌声が得られた. (2)両耳間時間差による音源方向知覚 人間の聴覚系における時間的な情報伝達の仕組みを,音響心理物理学的な観点から昨年度に引き続き調査した.両耳間時間差に基づく純音の頭内音像定位の働きを調べることによって,定位能力の低下と時間的な情報の喪失との関連性について検討を行った.その結果,同じ位相多義性の条件下でも,刺激音の周波数によって,時間差の違いが判断可能な場合と困難な場合が存在することがわかった.この違いは,定位能力の低下が位相多義性以外の要因による可能性を示唆しており,神経系での時間情報の喪失の可能性が考えられた.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 赤木正人, 清水一郎: "STRAIGHTを用いた話声からの歌声合成"電子情報通信学会技術報告. SP2003-37. (2003)
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[Publications] Ito, K., Akagi, M.: "Study on improving regularity of neural phase locking in single neuron of AVCN via computational model"Proc.ISH2003. 77-83 (2003)
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[Publications] 齋藤毅, 鵜木祐史, 赤木正人: "歌声のF0制御モデルにおけるパラメータ決定に関する考察"音響学会聴覚研究会資料. H-2003-111. (2003)
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[Publications] 伊藤一仁, 赤木正人: "頭内定位実験による聴覚系の位相情報伝達に関する検討"音響学会聴覚研究会資料. H-2004-1. (2004)
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[Publications] 辻直也, 赤木正人: "歌声らしさの要因とそれに関連する音響特徴量の検討"音響学会聴覚研究会資料. H-2004-8. (2004)
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[Publications] Saitou, K., Unoki, M., Akagi, M.: "Development of the F0 Control Model for Singing-Voices Synthesis"Proc.SP2004. (2004)