2001 Fiscal Year Annual Research Report
動的で多次元な状況の視覚認知における属性情報と時空間情報の統合メカニズムの研究
Project/Area Number |
13610084
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋木 潤 京都大学, 情報学研究科, 助教授 (60283470)
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Keywords | 視覚的作業記憶 / 視覚的注意 / 情報統合 / change blindness / 変化検出 / 主観的輪郭 |
Research Abstract |
(1)異なる視覚属性の統合に関して、多物体恒常性追跡法(MOPT)という課題を考案し,色と形態などの属性情報と時空間的位置情報の視覚的作業記憶における統合を検討した.従来の視覚的作業記憶内に4つから5つの物体の情報を同時に保持できるという主張とは異なり,動的かつ多次元な状況においては,せいぜい2つの物体の情報しか同時に保持することができないことがわかった.我々の視覚的作業記憶は属性と位置の統合された物体表象が機能単位になっているというよりは,属性と位置の統合自体が物体の運動速度や保持すべき物体の個数の関数になっていることがわかった.こうした時空間特性は,運動速度(表象変換のコスト)と保持すべき物体数(表象保持のコスト)の独立な効果を仮定した単純な数理モデルで記述することが可能であった.さらに,色と形態の組合せを動的に保持変換する課題から,知覚属性同士の統合された情報の利用可能性も動的な状況では静止状況に比べて非常に低下することがわかった. (2)Change blindness現象が示唆する厳しい容量限界を持つ視覚的短期記憶内にどのような情報が保持されているかを検討するために主観的輪郭図形を用いた変化検出課題を行った.ブランクを挟んで形態が変化している物体の有無を探索させる課題では,物体の変化量が同じでも,変化物体が主観的輪郭図形を構成する場合の方が,探索がより正確になることが明らかになった.また,この効果は主観的なエッジのレベルではなく主観的な表面表象のレベルで起こっていることが示された.さらに,刺激呈示時間を系統的に操作して容量限界を探る手法を用いた結果,通常の変化検出課題で用いられる範囲では,主観的表面の有無にかかわらず容量限界には達せず,主観的表面の効果は,物体表象生成の処理速度の違いに規定されることがわかった.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 遠藤信貴, 齋木潤, 齋藤洋典: "新奇図形の照合課題におけるネガティブ・プライミングの生起の規定因"心理学研究. 72・3. 204-212 (2001)
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[Publications] 齋木潤: "視覚的注意のパルスニューラルネットワークモデル"認知科学. (印刷中).
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[Publications] 齋木潤: "認知科学の新展開 第2巻 コミュニケーションと思考(分担執筆)"岩波書店. 17 (2001)