2001 Fiscal Year Annual Research Report
錯視図形を用いた左半側空間無視評価法についての研究
Project/Area Number |
13610107
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
小山 康正 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 研究員 (20281678)
|
Keywords | 半側空間無視 / 錯視 / 神経心理学 / 心理検査法 / 注意障害 |
Research Abstract |
今年度は研究に要するシステムの構成と予備的検証を行った。刺激図版の呈示と反応を測定するため、既存の液晶タッチパネルおよび液晶タブレットを利用し、コンピュータにより作成された錯視図形を協力の得られた半側空間無視患者に呈示した。刺激図形はMassironiら(1988)によるWundt-Jastrow錯視図形を用いた。円弧状の同じ図形一組を上下に配置し、患者は錯視図形の上下いずれが長く見えるか、口頭で答えるか、いずれかの図形を手で触れる事により回答した。健常者では、錯視図形のいずれの左右端に錯視の生起を決定する識別点があっても内側の図形が長く見える錯祝を生じる。また、この一組の図形を上下逆転させても、大きさを変化させても変化は見られない。今年度、検討を行った患者では、左半側空間無視患者では左方に識別点のある図形で、また、右半側空間無視患者では右に識別点が存在する図形で期待される錯視を認めなかった。図形の大きさや上下の向きなどによる結果への影響はないと示唆され、また、左半側空間無視に合併した左同名半盲の影響も、現時点では本質的影響を及ぼしていないと考えられた。このほか、脳梁損傷患者1例の半側空間無視症状についても同様の錯視図形を用いて検討したが、患者は左手で右半側空間無視、右手で左半側空間無視を示す結果となった。本症例については、第25回日本神経心理学会において報告を行った。いずれの症例についても、従来の半側空間無視評価法(線分抹消、模写、線分二等分、BIT行動性無視検査)の成績とやや異なる結果を示すことから、錯視図形を用いた評価法では、従来の評価法と質的に異なる無視症状を検出している可能性が示唆された。次年度より症例数を増やすとともに、ビデオを用いた反応潜時の検討、視線の動きの検討などを加えて、評価法としての特徴を明らかにし、左半側空間無視のメカニズムについても考察を行いたい。
|