2003 Fiscal Year Annual Research Report
層理論に基づく痴呆老人の感情の個人差分析と対応するケアの体系化の試み
Project/Area Number |
13610109
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
堀毛 一也 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (10141037)
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Keywords | 痴呆性高齢者 / パーソナリティ / 層理論 / 介護施設職員 / 痴呆ケア / 個人差 / 素朴倫理 / 感情分析 |
Research Abstract |
本年度は、研究の完成年度として、層理論を基盤とするパーソナリティ心理学的視点から、痴呆性高齢者の性格および感情傾向、およびケアのしかたとの関連について、これまで行ってきた調査のまとめを行った。9県にわたる25の施設職員を対象とする調査の結果、230名から有効回答票を得た。性格的特徴に関しては、攻撃性、協調性、潔癖性、内閉性の4因子、感情的特徴に関しては、陽性・親和、陰性・不安、不快・怒り、退屈の4因子が得られた。得点間相関から、攻撃・不快、協調・親和、内閉・不安という3タイプが、施設介護職員により、痴呆性高齢者の主要な性格・感情タイプとみなされていることが明らかになった。ケアのしかたについては、共感・反復、賞罰、見守りという3因子が得られ、協調・親和タイプには、共感反復や賞罰によるケアが効果的であるとみなされること、また見守り(配慮・非言語的ケア)は、すべてのタイプに共通する基本的なケアとして認識されていることが明らかになった。さらに経験年数や職種との関連を検討したところ、経験年数の浅いほうが、高齢者を協調的・親和的にとらえやすいこと、また、グループホーム勤務者は、他施設勤務者に比べ、協調的・親和的な見方をもつことなどが明らかになった。これらの調査結果については、日本グループ・ダイナミックス学会で発表するとともに、日本痴呆ケア学会誌等の学術雑誌に投稿する予定である。これと平行して、施設介護担当者にケアに関するインタビューや自由記述に基づく調査を行い、先に示した調査結果に基づく痴呆性高齢者の性格的・感情的特徴と、ケアに関する素朴理論との関連の検討を行った。その結果、性格的・感情的特徴に関しては、主要な3つの性格的・感情的特徴の組み合わせにより、無気力型、癒し型など複合的な素朴性格理論が存在するが、そうした見方とケアとの対応は必ずしも明確なものとはいえないことが示された。この分析結果のまとめは日本痴呆ケア学会で発表予定である。さらに、痴呆症状の進展にともなうパーソナリティや感情傾向の変容の検討も行っているが、主としてサンプル確保の困難により現時点では十分な分析ができていない。この点に関しては引き続き検討を進め、2005年1月をめどに成果報告書をとりまとめる予定である。
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Research Products
(2 results)