2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610138
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
宇野 宏幸 兵庫教育大学, 学校教育学部, 助教授 (20211774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 理直 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 助教授 (00273714)
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Keywords | 調音結合 / 破裂音 / 音声知覚 / 発達 / 学習障害 / 音韻修復 / フォルマント遷移 / 音韻意識 |
Research Abstract |
知覚実験では、昨年度からおこなっている4〜6歳児を対象とした音韻修復実験を引き続きおこなって、より多くのデータ収集をおこなった。実験は、連続発声された母音/a/と破裂音/t/+/e/ならびに母音/a/と破裂音/P/+/e/を知覚する際に破裂音部分を雑音によってマスキングした場合の先行母音/a/の効果についてしらべた。この時、後続する破裂音の調音を予期した運動が先行母音中に出現するのであれば(調音結合)、先行母音の音響成分のなかに後続する破裂音を識別するための情報が含まれているはずである。したがって、連続発声の破裂音部分をマスキングしても、後続する破裂音をほぼ正しく知覚することができるであろう。実際に、成人を対象とした知覚実験ではこの予測通りに音韻の修復現象を観察することができた。さらに、後続する破裂音の違いによって母音/a/の末端部の第2フォルマント遷移が異なっていることが確認され、これが弁別的特徴となっていることが示唆された。この音韻修復現象は、生後の知覚学習の結果として生じると考えられるので、音韻そのものの知覚と発声がほぼ形成される4〜6歳の幼児における修復現象をしらべることによって、その発達的変化を検証できるものと考えた。その結果、年齢の増加とともに正答率も上昇する傾向が認められた。また、先行母音の音響学的特徴が成人のそれに近い子どもほど正答率が高かった。これらの結果は、調音結合の生成と知覚が個体の発達のなかで相互作用しながら形成されていくという仮説を支持するものである。 モデル化にあたって研究分担者は、言語のインターフェースにおける、定性的性質と定量的性質の変換に関する研究をおこなった。特に、信念の程度(定量的性質)と意味の真偽(定性的性質)、音声の知覚関連物理量(定量的性質)と音韻の弁別素性(定性的性質)の相互作用に関する研究を重点的におこなった。その結果、音声の調音結合および実時間上の音響特性の最適値は、単に調音運動による制限のみならず、知覚的制限も強く影響していることが明らかとなった。この現象は、phononと呼ばれる原子的なカテゴリーがもつ数量的な分布モデルによって捉えることが可能であり、このモデルは、例えば日本語の幼児のr音の変異、英語のt音の変化、日本語の母音無性化といった現象を適切に説明することができる。また、意味に関しては、従来の真理関数的なアプローチでなく、確率論に基づく「信念」を中心に据えることで、反事実条件文の意味がより適切に捉えられることなどを明らかにした。これらの研究は、言語における音声と意味という最も重要なモジュールが、ともに定量的な性質を直接反映していることを示すものであり、言語表象の性質を考える上で最も重要な性質である。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] Itami, S., Uno, H.: "Orbitofrontal cortex dysfunction in attention-deficit hyperactivity disorder revealed by reversal and extinction tasks"NeuroReport. 13巻・18号. 2453-2457 (2003)
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[Publications] 宇野宏幸: "注意欠陥多動性障害と行動抑制-認知神経心理学的モデル-"特殊教育学研究. 40巻・5号. 479-491 (2003)
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[Publications] 宇野宏幸: "徐波睡眠時に持続性棘徐波を示すてんかんの神経心理学"兵庫教育大学研究紀要. 23巻・第1分冊. 109-112 (2003)
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[Publications] 松井理直: "音声自然降下の知覚的補正に関する予備的研究"Theoretical and Applied Linguistics at Kobe Shoin. 4号. 77-84 (2001)
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[Publications] 松井理直: "HPSGにおける音韻情報のタイプ継承と制約"Theoretical and Applied Linguistics at Kobe Shoin. 5号. 53-82 (2002)
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[Publications] 松井理直: "言語理論に基づく音楽の形式的分析とその問題点"日本音響学会誌. 59巻・3号. 165-171 (2003)
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[Publications] 松井理直: "推論における論理変形と認知的関連性の計算"Theoretical and Applied Linguistics at Kobe Shoin. 6号. 95-122 (2003)
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[Publications] 松井理直: "母音無声化の知覚的手がかりについて"Kansai Linguistic Society. 23巻. 106-116 (2003)
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[Publications] 松井理直: "計算論的関連性理論に基づく反事実条件文の解釈"Theoretical and Applied Linguistics at Kobe Shoin. 7号. 83-101 (2004)
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[Publications] 松井理直: "文法と音声III(プロトタイプカテゴリーとしての音韻表象)"くろしお出版. 14 (2001)
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[Publications] 松井理直: "ことばの科学ハンドブック(第2章)"研究社(印刷中). (2004)