2002 Fiscal Year Annual Research Report
親子三者間相互交渉における子どもの会話参加スキルの発達
Project/Area Number |
13610156
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
加須屋 裕子 文京学院大学, 人間学部, 助教授 (60296291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 佳世子 文京学院大学, 人間学部, 教授 (70213395)
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Keywords | 三者間会話 / 語用論 / 言語発達 / 母子間相互交渉 / 父子間相互交渉 / 家庭観察 / 発話機能分析 / 自由遊び |
Research Abstract |
幼児の親およびきょうだいとの家庭での三者間相互交渉における、言語的スキルの獲得と、会話全体の運用および維持能力との関係を調べることを目的とした。親と上のきょうだいを含む三者間の会話では、対象児が言語的スキルの学習に有効で身近なモデルが提供されるものと考えられる。また、母子三者間と父子三者間では子どもの意図の相互主観的なよみとる方や会話のタイミングの取り方に違いがあると推察され、このような異なる機能をもつ会話場面に参加し話題を維持していく経験は、子どもの語用論的スキルの発達に大きな役割を果たすものと考えられる。具体的には、(1)2歳半から3歳にわたる2時点での、子どもの話題への加入や維持に関わる語用論的スキルがどのように獲得されていくか、(2)母子および父子三者間相互交渉でこのような言語的スキルの習得に、親およびきょうだいがどのような役割を果たすかを、三者の会話参加のダイナミックスの変容から検討した。 分析の結果、2歳半では、子どもの話題への加入(Join)はほとんど見られず、子どもの言語的スキルの未熟さが示されたが、3歳時では、その割合がほとんどの家族で上昇していた。すでに収集している3歳半でのデータでこのスキルがさらに発達しているのかを調べる必要性が示唆された。自分から話題を提供する言語行動(Initiation)は2歳半でも見られ、兄と親が話しているときに自分の話題で親の注意を引こうとする行動は2歳半より3歳時点でのほうが多いことが分かった。また母親の発話は兄より子どもに向けられるほうが多く、父親はその傾向が低かった。この結果から、父親の言語インプットが母親のインプットより制限されていることがわかり、そのような言語環境が子どもに会話スキルの訓練の場を提供していることが示唆された。さらに、母子間父子間ともに、親の発話機能の中でも直接的な指示語(Imperative)が多いことが示されたが、父親の暗示的間接語(Implied Indirect)の割合が母親のそれより高く、父親との会話の方が母親とのより、子どもに高度な語用論的スキルを要求している環境を提供していることを裏付けた。
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