2001 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害者に対する統合的アプローチ―理論とその実践の展開―
Project/Area Number |
13610165
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
村瀬 嘉代子 大正大学, 人間学部, 教授 (70174290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 康裕 大正大学, 人間学部, 専任講師 (40338596)
卯月 研次 大正大学, 人間学部, 専任講師 (10317646)
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Keywords | 重複聴覚障害 / 統合的アプローチ / 連携 / コンサルテーション / 家族への援助 / 育ち直り |
Research Abstract |
今日、心理臨床の対象領域やアプローチの方法は多様化してきているが、コミュニケーションの問題から、ごく最近まで聴覚障害者はその対象とはなり難かった。重複する障害(肢体障害,視覚障害,知的障害,精神障害など)を併せ持つ重複聴覚障害者に対しては尚更である。本研究では、こうした重複聴覚障害者の心理的援助についての効果的なあり方について、基礎的な知見を整理・提示し、さらに今後の課題を明らかにすることを目的とする。 大正大学カウンセリング研究所では、平成11年より埼玉県のろう重複障害者授産施設の入所者を対象として心理的援助を行っている。施設入所者に対する心理的援助の内容としては、(1)精神的疾患、問題行動を抱える施設入所者に対する個別面接,(2)施設入所者に対する集団療法,(3)施設職員に対するコンサルテーション,(4)施設職員に対する心理的援助,(5)施設入所者家族に対する心理的援助等である。 以上の実践を定期的に継続しながら、節目毎に本実践の総合的考察を行っている。 重複聴覚障害者への心理的援助を考える際、(1)聴覚障害に起因するコミュニケーションの阻害に加え、本人を取り巻く環境の変化が当人にとっては不可解なまま生じることになり一つ一つの体験が分断されやすいこと、そして入所者の多くは人間関係での分離欠損体験を持ち、暦年齢としては成人であっても日々の営みの一つ一つが真に自分の生として蓄積し意味を持って自分という歴史が出来るに至っておらず歴史が寸断されている場合が多いことを踏まえ、「育ち直り(村瀬,1996)」という視点が必要になると思われる。その為には各人の素質と現実にそれがどの程度機能しているのかの見極めを丁寧にしていくこと、知能テスト・発達検査などに反映されにくい、一人一人の持っている力をどうアセスメントしていくかが求められ、今後の大きな課題である。
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Research Products
(1 results)