2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本的文化が社会的認知に及ぼす効果の検討-個人主義・集団主義を超えた第3の視点-
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13610180
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊坂 裕子 日本大学, 国際関係学部, 助教授 (90222918)
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Keywords | 個人主義 / 集団主義 / 日本文化 / 協調と競争 / ことわざ / 価値観 |
Research Abstract |
さまざまな文化は、個人を優先するか集団を優先するかという違いにより、個人を優先し競争が強調される個人主義と集団を優先し協調が強調される集団主義とが考えられてきた。しかし、日本人大学生の研究から「協調と競争を通した自己利益の維持」という第3の視点が示唆された。これまでの研究から、個人主義・集団主義にもさまざまな側面があることが指摘されている。本年度は、日本文化における個人主義・集団主義・「協調と競争を通した自己利益の維持」の特徴を分析するために、古くから代々語り継がれてきた「ことわざ」を使用した。 小学館「慣用ことわざ辞典」に収録されていることわざ約3500語の中から、「評価的信念」、「規範的・禁止的信念」を表現する約1500語を分析の対象とした。個人主義・集団主義の構成要素として、Ho & Chiuが過去の研究から特定した個人主義・集団主義に関する5領域にわたる18要素、社会組織に関する8要素に、第3の視点として「協調と競争を通した自己利益の維持」を追加し、各要素の特徴を示し、各要素について、(1)個人主義を肯定するもの、(2)否定するもの、(3)集団主義を肯定するもの、(4)否定するもの、(5)「協調と競争を通した自己利益の維持」を肯定するもの、(6)否定するものの6つに分類した。ことわざの分類は、心理学科3年生の4人と筆者が行った。その結果、全体としては、集団主義を肯定することわざが多い(37.5%)ものの、個人主義を肯定することわざ(25.7%)や協調と競争を通した自己利益の維持(20.7%)も多く、日本の伝統的価値観においても必ずしも集団主義のみが強調されていたわけではないことが明確となった。自律性・同調に関する信念や自己信頼についての信念、社会的組織に関する信念では、集団主義を肯定することわざが多いが、価値観や責任、成果などに関する信念では、個人主義を肯定する信念が集団主義と同程度に多いなど日本文化の特徴が示唆された。
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Research Products
(1 results)