2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610183
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Research Institution | Ube Frontier College |
Principal Investigator |
伊藤 順子 宇部フロンティア大学短期大学部, 保育学科, 講師 (10331844)
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Keywords | 幼児 / 向社会性 / 自己認知 / 困窮状況 / 遊び場面 / 向社会的行動 / 仲間 / 相互作用 |
Research Abstract |
向社会性についての認知の役割を明らかにするために,遊び場面を向社会的行動出現過程として位置づけ,向社会性についての認知の個人差と仲間との相互作用との関連を検討した。その結果,向社会性についての認知が高い幼児は,友だちと同じ一つの遊びをし,その中で遊びに関する会話を行う傾向が,逆に,向社会性についての認知が低い幼児は,何もしていないことが多く,友だちの遊びに興味を持っていてもそれを眺めているだけで,遊びに加わらない傾向が示された。向社会性についての認知が高い幼児は,仲間との接点や相互作用が多い場面に積極的に参加していることが示唆される。向社会性についての認知が高い幼児は,友だちの困窮状況に遭遇する回数が多いという前年度の研究結果を踏まえると,「向社会的にふるまうことができる」という認知が低い幼児は,困窮者が発生し,援助を依頼されるような場面に関わることを回避する傾向があること,それに反して,「向社会的にふるまうことができる」という認知が高い幼児は,興味・関心が同じ友だちと積極的に接点を持ち,集団内で発生した困窮場面に関与している様子がうかがえる。向社会性についての認知の個人差によって,仲間との相互作用,および困窮場面遭遇に差異がることが示唆される。この結果は,自分をいかに認知しているかによって,遊び場面における向社会的行動の学習の機会に差異があることを示しており向社会的行動の発達における自己認知の重要性を示すものである。個々の子どもに応じた向社会的行動の育成を考える場合,向社会性についての認知の変容が重要な鍵となることが示されたと言えよう。 さらに,本年度は,3年間の研究結果(向社会性についての認知の形成過程と役割・自己制御機能についての認知が向社会的行動の出現過程に及ぼす影響)をまとめ,向社会的行動と自己認知との関連に関してモデルを考案し,今後め研究の方向性を検討した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 伊藤 順子: "幼児はいかに向社会的行動をふり返るか-向社会性についての認知との関連から-"保育学研究. 第41巻・第2号. 75-82 (2003)
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[Publications] 伊藤 順子: "向社会性についての認知はいかに行動に影響を与えるか-価値観と効力感の観点から-"発達心理学研究. 第15巻(印刷中). (2004)
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[Publications] 伊藤 順子: "向社会性についての認知はいかに行動に影響を与えるのか-自由遊び場面での観察を通して-"日本保育学会第56回大会発表論文集. 706-707 (2003)
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[Publications] 伊藤 順子: "向社会性についての認知の発達的検討-価値観と効力感の観点から-"日本発達心理学会第15回大会発表論文集. 48 (2004)
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[Publications] 樟本千里, 伊藤順子, 山崎晃: "児童の自己制御タイプと向社会性との関連"日本発達心理学会第15回大会発表論文集. 398 (2004)
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[Publications] 伊藤順子: "向社会性についての認知はいかに行動に影響を与えるのか-遊び場面での困窮場面遭遇との関連から-"日本保育学会第57回大会発表論文集. (印刷中). (2004)