2001 Fiscal Year Annual Research Report
感情の制御技法とその社会規範にかんする理論的・実証的研究
Project/Area Number |
13610195
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
奥村 隆 千葉大学, 文学部, 助教授 (30211816)
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Keywords | 感情 / 暴力 / ノルベルト・エリアス / 異質性 / コミュニケーション |
Research Abstract |
本年度の研究は、主に「感情の社会学」をめぐる理論枠組みの検討に向けられた。本補助金の助成以前に行ったノルベルト・エリアスの感情や暴力についての社会理論を検討した成果を、著書『エリアス・暴力への問い』(勁草書房)として5月に刊行したが、ドイツでの暴力を主題に再整理して「「自己意識」の世代間連鎖と市民層の位置-『文明化の過程』から『ドイツ人論』へ」という学会報告を行った(日本社会学史学会、6月23日、岡山県立大学)。また、エリアスの弟子エリック・ダニング教授(レスター大学)の来日時、講演「エリアス、ホロコースト、文明化の過程」(7月24日、千葉大学)を企画するとともに、彼との意見交換を行った。 この過程で、理論的検討が必要な論点として、「異質な他者」にどう対処するか、という問題が浮上し、これを考察する作業を行った。ルソー、ゴフマン、アーレントが「同質性・異質性」をどう考え、いかなるコミュニケーションを構想したかを論じた「社会を剥ぎ取られた地点-「無媒介性の夢」をめぐるノート」(『社会学評論』52巻4号)、ヨーロッパ社会での異質性への対応の多様性を人類学者エマニュエル・トッドに依拠して整理した「家族・民族・異質性-エマニュエル・トッドのヨーロッパ」(『親密圏の現代的変容-家族関係を中心にして』千葉大学大学院社会文化科学研究科研究プロジェクト報告書・第41集)、がその成果である。 こうした理論研究の一方で、感情のマナーにかかわる本や雑誌の実証的研究は、現在のところ大宅壮一文庫において記事を収集し、整理する段階に留まっている。また、感情経験についてのインタビューは、千葉大学文学部の授業「社会調査実習」と連動しながら、国際結婚カップルへのインタビューを行った。これも分析が進んでおらず、実証的研究の進展は、次年度以降の課題となる。
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[Publications] 奥村 隆: "社会を剥ぎ取られた地点-「無媒介性の夢」をめぐるノート-"社会学評論. 52,4号. 2-19 (2002)
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[Publications] 奥村 隆: "家族・民族・異質性-エマニュエル・トッドのヨーロッパ-"親密圏の現代的変容-家族関係を中心にして-千葉大学大学院社会文化科学研究科研究プロジェクト報告書. 41. 109-163 (2002)