2002 Fiscal Year Annual Research Report
感情の制御技法とその社会規範にかんする理論的・実証的研究
Project/Area Number |
13610195
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
奥村 隆 千葉大学, 文学部, 助教授 (30211816)
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Keywords | 感情制御 / 自己制御 / 暴力 / ノルベルト・エリアス / ミシェル・フーコー / ハンナ・アーレント / エリック・ダニング / 他者 |
Research Abstract |
14年度の研究では、昨年度から行ってきた「感情の社会学」をめぐる理論枠組みの検討を続けることが中心的な課題となった。とくに、これまで研究の基盤としてきたノルベルト・エリアスの感情制御をめぐる社会学と他の論者を比較し、より広範な枠組みを提示する作業を行った。その成果として、「文明化の過程」を論じたエリアスと「文明化の強制」を論じたミシェル・フーコーを対比した論文「「自己抑制」へのふたつの視線-エリアスとフーコーをめぐるノート」、感情制御の解体=暴力の発現への経路を「文明化」の進む国家内空間と国家間空間のあいだの矛盾に見出すエリアスと国民国家内での「国家」と「国民」の矛盾に見出すハンナ・アーレントを対比した論文「暴力から護られた場所-エリアスとアーレント」を作成した。前者は奥村を代表とする千葉大学大学院社会文化科学研究科研究プロジェクト報告書・第108集『感情と社会』に発表したが、この研究プロジェクトでは、呪術の衰退と感情の制御、インターネット・コミュニケーションでの感情処理、男性の恋愛、などを研究する千葉大学大学院、早稲田大学大学院の大学院生との意見交換を行い、共同の成果を報告書としてまとめた。 また、何人かの研究者との意見交換を行った。うち、毛利嘉孝氏(九州大学)からは文化研究によるアプローチについて教示を受け(6月)、エリック・ダニング氏(レスター大学)にはフーリガニズム、テロリズム、多文化状況と感情制御の関係などについてイギリスでインタビューを行った(2月)。いずれにおいても「異質な他者」との関係が、議論の焦点となった。 こうした理論枠組みをめぐる研究はいくらかの進展を見せたが、実証的研究については昨年度に引き続き雑誌資料を収集するにとどまり、まとまった成果をあげるにはいたっていない。15年度の研究における大きな課題である。
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[Publications] 奥村 隆: "「自己抑制」へのふたつの視線-エリアスとフーコーをめぐるノート"奥村隆編 千葉大学大学院社会文化科学研究科研究プロジェクト報告書『感情と社会』. 第108集. 95-118 (2003)
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[Publications] 奥村 隆: "暴力から護られた場所-エリアスとアーレント"庄司興吉編『リスク社会化のなかの暴力・文化・家族・福祉-21世紀社会の課題と展望III』. 仮題、2003年刊行予定(発表予定).