2003 Fiscal Year Annual Research Report
感情の制御技法とその社会規範にかんする理論的・実証的研究
Project/Area Number |
13610195
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Research Institution | RIKKYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
奥村 隆 立教大学, 社会学部, 教授 (30211816)
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Keywords | 距離化 / 没頭 / 再帰性 / モダニティ / 不安 / 理想主義 / 対人感覚 / 感情労働 |
Research Abstract |
最終年度(15年度)の研究では、13・14年度に行ってきた「感情の社会学」をめぐる理論的研究をさらに進めるとともに、感情の制御様式の変容と多様性の実証的研究を若手研究者との研究会で検討し、それぞれ成果をまとめた。 第一の理論的研究については、とくに「距離化」(ノルベルト・エリアス)や「再帰性」(アンソニー・ギデンズ)など「モダニティ」特有とされる機制と感情の関係、およびこれらの現象とこれを解明する社会学(とくに「感情社会学」)との関係について検討を行い、論文「没頭を喪失した社会--「社会学」の位置をめぐって」としてまとめた。ここでは、「笑い」の変化を入り口として、「没頭」を喪失したように見える現代社会における「不安」と、それを再帰的に観察する自己(そこには社会学をする自己も含まれる)との関係が論じられ、距離化や再帰性が不安を生み出す経路とそうした不安から自由になる可能性についての考察が行われた。 第二の実証的研究については、3名の若手研究者と共同研究会を行い、各自の研究テーマについて資料収集と分析に基づく成果を議論した。うち、小倉敏彦は、明治末期の「煩悶青年」と大正期の教養主義をめぐる言説を分析し、この時期の青年文化の生真面目さや理想主義を、とくに森田療法を事例として抽出した。また、櫻井龍彦は、明治維新以降の近代化過程で日本人の対人感覚がどう変容したかを検討し、都市的な公共空間で見知らぬ他者への敵意や恐怖心の消失と対人恐怖症の先鋭化が見られることを指摘した。こうした歴史的研究に対して、小村由香は、現代の生活保護ケースワーカーへのインタビュー調査を行い、彼らが公的領域でどのように感情労働を行い、その対人サービスにはいかなる葛藤と喜びが存在するのかを検討した。 なお、この研究会の成果、および過去3年度の理論的研究成果は、「研究成果報告書」(冊子体)として刊行される。
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