2001 Fiscal Year Annual Research Report
精神医療改革と権利擁護制度形成に関するアメリカ・カナダ・日本比較研究
Project/Area Number |
13610197
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高橋 涼子 金沢大学, 法学部, 助教授 (80262541)
|
Keywords | 精神医療 / 権利擁護 / アドボカシー / 患者の権利 / 脱施設化 / 医療社会学 / アメリカ合衆国:日本 |
Research Abstract |
1.医療における権利擁護(患者アドボカシー)は、専門職外部からの統制と施設内部のチェック機関設置という2つの制度的装置によって権力の乱用の防止が可能になることが確認された。特に日本の精神医療では、依然として入院患者数の多さと入院期間の長さが国際的にも際だっており、患者の権利擁護にはまず病院の入院患者に対する内部的あるいは外部からの権利擁護システムが必要である。このような事情を背景として、大阪ではNPOの大阪精神医療人権センターが中心となり、入院経験者や市民が入院患者に対する訪問を通じて病院への申し入れを行うなどの権利擁護活動を立ち上げることになっており、今後の動向に注目していきたい。 2.アメリカ合衆国、カナダ、及びヨーロッパ諸国における精神医療改革の主流である脱施設化と地域ケアの構築については、理念の定着は確実であるが、社会資源の配分と効果の評価方法は未だ確立されていないことが明らかになった。また、病院からコミュニティへ患者が生活の場を移すにつれ、治療の継続が必要な患者の治療確保が大きな課題として立ち現れていることが明らかになった。施設内の入院患者に関する権利擁護の法制度が整備された一方、各国が地域で生活する患者に対し治療を受けることを強制する法制度をそなえるようになっている。その運用と患者の権利擁護との関連については新たな課題である。 3.以上、研究の知見の一部を、日本法社会学会2001年度学術大会ミニ・シンポジウム「医療システムと法」における報告「患者-医師関係の現代的変容と法」及び第74回日本社会学会大会報告「権利擁護(アドボカシー)の課題と展望」にて発表した。
|