2002 Fiscal Year Annual Research Report
説明様式の日米仏比較研究―初等教育に見る説明と理解のスタイル―
Project/Area Number |
13610266
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
渡辺 雅子 国際日本文化研究センター, 海外研究交流室, 助教授 (20312209)
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Keywords | 比較教育 / 比較文化 / 歴史教育 / 知識社会学 / 作文教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本・米国・フランスの初等教育においてどのような説明のスタイル(理解の仕方・説明・思考のパターン)が教えられているのか、その特質を作文法と歴史教育の国際比較、および絵を使った認知実験を通して実証的に検証しようというものである。 プロジエクト2年目に当たる本年度は、フランスリヨン市の小学校5佼を対象にのべ5ヶ月間にわたって調査を行った。計画していた調査項目の他に、許可が得られる限り最大限学校観察が行えたのは、フランスの初等教育の枠組みを知る上でも大きな収穫だった、以下に得られた知見の概略のみ述べたい。 1)フランスの初等教育では特にフランス語と算数がカリキュラムの中心となり、その中でも文法と書き取りが占める時間は日米とは比較にならないほどである。2)このような枠組みにおける作文教育は、作文の時間といえども実は文法を教えている場合が多く、物語などを書かせる場合も、いかに形式に従って正しい綴りで書かれているかに焦点が当てられていた。3)歴史授業では、絵や写真から歴史的な状況を読み取らせつつ、ある事柄が契機になって次の事柄が起きる展開を歴史の根本理論として教えていた。法則や進歩といった枠組みを歴史理解に使うことは意識的に避けられ、偶発的な事柄の積み重ねから歴史は成り立ち、既存の制度もいつでも変えられる可能性かあることが強調されていた。4)絵を見て書く作文実験では、時系列で状況を説明する物語式のパターンが多く見られ、理由を述べる実験では順番に過去に遡るパターンが多く見られたのが、日本の時系列と米国の因果律の説明パターンと異なるフランスの特徴であった。日米と同様に、特に歴史の教授法に表れる「時間」の捉え方と「因果関係」という思考の基本カテゴリーが生徒の説明様式に深く関わることがフランスにおいても観察された。
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Research Products
(1 results)