2002 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代における西洋学校情報の受容と学校論形成過程の研究
Project/Area Number |
13610332
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
岩田 高明 安田女子大学, 文学部, 教授 (70160116)
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Keywords | 海国図志 / 漢訳洋書 / 西洋教育情報 |
Research Abstract |
本年度は、漢訳洋書の西洋教育情報の分析を中心に研究を進めた。今回はそのうち、アヘン戦争後に西洋事情調査のために著されたもので、江戸時代に日本に舶載され訓点を付して翻刻された漢訳洋書を収集して分析した。日本で翻刻された漢訳洋書に限定したのは、舶載後に死蔵されていたのではなく、訓点者をはじめとする相当数の識者が読んでいると考えたからである。今回収集したのは、魏源『海国図志』(1854)、慕維廉『地理全志』(1858-9)、徐継除『瀛環志略』(1861)、慕維廉『英国志』(1861)、陳逢衡r英吉利紀略』(1853)、裨治文『聯邦志略』(1864)、裨理哲『地球略説』(1860)の7件である。[( )内は翻刻年] そのうち、『海国図志』の西洋教育情報を分析して、「『海国図志』の西洋教育情報」と題して論文にまとめ発表した。『海国図志』の西洋教育情報は、そのころ出版されていたオランダ語による地理書の邦訳に記載された西洋教育情報に比べると、いささか古い情報であったり、精細さに欠ける情報であった。しかし『海国図志』は、当時の知識人の学術用語であった漢文で書かれており、対外的危機感の中で最も広く読まれた西洋事情書だったのである。その意味で、『海国図志』に記された西洋教育情報が、日本の知識人に与えた影響は大きいと言うことができる。 また、他の漢訳洋書の西洋教育情報も、近日中に論文として発表する予定である。 さらに、蘭学者(洋学者)の地理書をはじめとする翻訳書・著述に含まれる西洋教育情報のうち、主なものはほぼ分析を終えた。残りは論文としてまとめるには至らない程度の断片的なものである。これらの記述はいずれ、総合的な形で報告したい。
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