2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610356
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
飯島 康夫 新潟大学, 人文学部, 助教授 (20313489)
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Keywords | 水利慣行 / 村落 / 水利秩序 |
Research Abstract |
1.渇水期に、同一用水路を利用する下流村落が、上流の堰を破却し、上流村落によるその堰の修復までの間に流下した水を引くことができるオタハライという水利慣行について、長野堰用水系の佐野堀で下佐野の2集落によって行われていたことを確認した。佐野堰ではハライタテと呼ばれており、番水による上流地域の田植が済むとハライタテが行われ、最下流の下佐野だけにその権限があったという。貝沢堀における貝沢も同様で、貝沢のハライタテが通過する上流の飯塚地区での調査でも最下流の貝沢のみがハライタテの権利を有していたことを確認した。この2つの地区に比べると、一貫堀水系の末流地域でのオタハライは、行う村落が複数重層していること、堰を払う方と留める方の地域の対立が非常に激しいことなどの差異があることが指摘しうる。オタハライの機能と村落間の関係を考える上で、留意すべき点である。 2.長野堰土地改良区保有の『長野堰史』『長野堰事業史』などの資料や、群馬県立歴史博物館所蔵の長野堰普通水利組合関係資料の調査から、長野堰の加用水として開削された榛名湖疏水の起業認可から工事にいたる過程の詳細を知ることができた。これまで、榛名湖疏水の開削は榛名湖の水を使用している現吾妻郡東村岡崎新田との対立と調整の問題が中心に論ぜられることが多かったが、長野堰普通水利組合内部においてもその賛否をめぐりさまざまな動きがあったことが明らかになった。オタハライ慣行とは直接関係はないが、用水源をめぐる村落間対立、また水利組合内での村落間対立という問題であり、その調整の結果として現在にまでつながる村落間秩序が形成されたと見ることができる。水利をめぐる村落間の関係を動態的に把握する良好な資料を得ることができたと考える。
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