2003 Fiscal Year Annual Research Report
環境歴史学的視点に立つ中世荘園研究―大野・直入郡を中心に
Project/Area Number |
13610406
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
飯沼 賢司 別府大学, 文学部, 教授 (20176051)
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Keywords | 環境 / 開発 / 灌漑 / 景観 / 絵図 / 神社 / 寺院 / 磨崖仏 |
Research Abstract |
本年度は、大分県の直入郡・大野郡域での現地調査を8月と3月に実施するとともに、中世絵図の現地調査として鳥取県東郷湖周辺(松尾神社領東郷荘)、島根県大社町(出雲大社)および和歌山かちらぎ町(神護寺領〓田荘)を行った。 前者の大野川流域の環境歴史学的調査は、これまで、(1)源流域の台地状地形の耕地開発(荻町地域)、(2)その少し下流部に展開する迫状地形(竹田市三宅地区、朝地町上尾塚地区)の耕地開発、(3)盆地状地形における耕地開発(緒方町中心部)に分けて、地形のあり方と開発の関係ついて、調査検討を進めてきた。今回は、前年まで調査していた竹田市三宅地区の続きにある朝地町上尾塚地区(旧三聖寺領大野荘内)が「志賀文書」に鎌倉時代からの史料が豊富にあることから、鎌倉から室町時代にかけての迫地形の耕地景観の復原が可能だと考え、夏期の調査では、この地区の調査を水田調査を行い、迫地形の開発パターンを見いだすことができた。 さらに、今年の3月には、大野川の支流である緒方川の流域に広がる緒方盆地の条里水田の水利灌概を調査して、この地域における古代から中世の開発のあり方について検討を行った。今年度の調査の結果、緒方荘の一宮・二宮・三宮などの神社や磨崖仏などの宗教施設の立地と取水口・水路の関係に注目し、条里的区画と関係する水路がどのようにして出来たのかを明らかにした。また、在地領主の館と水利支配の関係についてもあるパターンを抽出することができた。 後者の中世絵図を環境歴史学的に分析する方法では、昨年に引き続き、東郷荘絵図の現地調査を行い、出雲大杜の絵図と比較しながら、ラグーン地形における開発と神社の立地について考察を行った。また、和歌山県のかつらぎ町にあった神護寺領〓田荘の調査では、現地調査を基に、文治5年の検注帳と絵図の関係、絵図の神杜と水路どの関係などについて新たな見解を組み立てることがてきた。東郷荘絵図と現地調査の成果については、別府大学史学研究会『史学論叢』34に掲載したので、参照されたい。
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Research Products
(1 results)