2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610424
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
奥村 哲 東京都立大学, 人文学部, 教授 (80144187)
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Keywords | 社会主義体制 / 社会統合 / 抗日戦争 / (国共)内戦 / 微兵制 / 保甲制 / 戸籍制度 / 総力戦態勢 |
Research Abstract |
筆者は社会主義体制を構成する基本的要素を、次の3点に求める。(1)政治におけるマルクス主義を掲げる政党による一党独裁、(2)経済における全面的な国公有と国公営(究極の統制経済)、(3)社会における一元的非自律的統合。このうち(3)については、従来、伝統社会を封建的とする誤った理解のために、社会主義体制との間に決定的な断絶があることは、ほとんど意識されてこなかった。そこで革命前の緩やかな社会統合が一元的非自律的統合にどのように転換していくのか、その過程を明らかにすることが、重要な課題である。特に、人間が集中し史料にも恵まれている都市部よりも、広大で分散した膨大な人口を抱える農村部を主要対象とするのは、困難は大きいが必要な仕事であろう。 平成13年度は、この決定的な転換期にあたる抗日戦争から国共内戦にかけての時期における、国民政府統治地域の変容を、微兵制を中心に研究した。抗日戦争の規模や期間は、中国がそれまで体験したことのないものであり、戦争を継続するためには従来の緩やかな統合と支配を放棄せざるをえなかった。科研費で購入した新聞のマイクロフィルムや、南京の中国第二歴史档案館でみた档案は、そうした事態を物語っている。現象をあげれば、微兵の責を負う末端の保長がおおきな権限を握るようになること、彼らが有力者と結託して行う不公正な負担割当が地域社会の深刻な問題になったこと、それが地域住民の対立と結集を生みだしていること、等々である。但し研究はまだ初歩的であり、今年、一層の努力が必要である。
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