2003 Fiscal Year Annual Research Report
高麗末期から李朝初期における対明外交儀礼の基礎的研究
Project/Area Number |
13610435
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Research Institution | KURUME UNIVERSITY |
Principal Investigator |
桑野 栄治 久留米大学, 文学部, 助教授 (80243864)
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Keywords | 高麗末期 / 対明遥拝儀礼 / 朝賀礼 / 賜宴 / 冊封体制 / 洪武帝 / 恭愍王 / 蕃国の礼 |
Research Abstract |
研究期間3年間のうち、平成13・14年度は李朝初期(ほぼ15世紀に相当)の対明遥拝儀礼に関する官撰史料の調査・収集に力点を置き、纂奪政権期の世祖代(1455〜68年)、李朝の総合法典が成立する成宗代(1469〜94年)を対象に、15世紀前半の遥拝儀礼に関する諸事例と比較検証した。そこで、最終年度にあたる今回の平成15年度科学研究費交付期間内には、李朝に先立つ高麗末期(ほぼ14世紀後半に相当)に、高麗国王がいかなる宮中儀礼をもって中国の皇帝に対処したのかについて調査・分析した。高麗末期から李朝初期を逆照射したその成果の概要は、以下の通りである。 1 『高麗史』礼志に散見する正朝・冬至・聖節の国家儀礼関連記録を抽出し、名節における賀礼を俯瞰することにより、遥拝儀礼の創出時期を元・明交替期に絞り込むことができた。高麗国王の宋・遼(契丹)に対する遥拝儀礼はいまのととろ確認できず、元の皇帝に対する儀礼は元干渉下の高麗社会に定着することはなかった。 2 元・明交替後の遥拝儀礼に関する事例を『高麗史』世家から抽出し、『高麗史』礼志所収の年代記および儀註(式次第)と比較検討した。その結果、遥拝儀礼の創出は、明の太祖洪武帝の即位から4年を経た恭愍王21年(1372)の冬至であることが判明した。これこそ李朝開創直後に開城の王宮で実施された対明遥拝儀礼の原型である。 3 元・明交替後の高麗と明との外交交渉を追跡調査し、高麗末期の遥拝儀礼が高麗国王の意志によるものか、あるいは明の関与があったのかを検証した。その際には明代の儀礼テキストである『大明集礼』と総合法典の『大明会典』を活用した。その結果、遥拝儀礼は洪武帝が「蕃国の礼」として制定した儀註の受容と実践であり、中華帝国の礼制が冊封体制下の高麗・李朝における外交儀礼のあり方まで規制したことを明らかにした。
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[Publications] 桑野 栄治: "ソウルの儀礼空間-朝鮮世祖代の望闕礼と圜丘壇祭祀"アジア遊学. 34. 23-35 (2001)
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[Publications] 桑野 栄治: "朝鮮世祖代の儀礼と王権-対明遥拝儀礼と圜丘壇祭祀を中心に"久留米大学文学部紀要(国際文化学科編). 19. 89-114 (2002)
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[Publications] 桑野 栄治: "朝鮮成宗代の儀礼と外交-『経国大典』成立期の対明遥拝儀礼"久留米大学文学部紀要(国際文化学科編). 20. 83-122 (2003)
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[Publications] 桑野 栄治: "朝鮮時代の国家祭祀と儒教-王権の創造と演出"アジア遊学. 50. 36-48 (2003)
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[Publications] 桑野 栄治: "高麗末期の儀礼と国際環境-対明遥拝儀礼の創出"久留米大学文学部紀要(国際文化学科編). 21. 61-105 (2004)