2001 Fiscal Year Annual Research Report
中世・ルネサンス期イタリアにおける都市・市民像の変遷史研究
Project/Area Number |
13610452
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐藤 眞典 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (90033654)
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Keywords | イタリア / 中世 / ルネサンス / L.ブルーニ / 都市論(像) / 市民論(像) / フィレンツェ / コンスタンツ和約 |
Research Abstract |
中世からルネサンスにかけての都市像や市民像の変遷史の研究は、「中世とルネサンスの区分線をどのように引いたらよいのか」を検討することにした。まずはルネサンスの都市・市民像の転換点を、2世紀の修辞家Aelius Aristides, Panathenaicosに範をもとめて、見事な『フィレンツェ市礼賛論Laudatio Florentinae Urbis』を書いたLeonardo Bruniの都市・市民論の詳しい翻訳紹介から始めている。その成果は当研究科の紀要論文(第二部、49号、50号)「L.ブルーニの美による統治論-(1)古代アテネを模倣した都市・市民論:形の美しい都市-」、「L.ブルーニの美による統治論-(2)心の美しい都市beneficentissima civitas-」に既に公表している。この論文シリーズは「L.ブルーニの美による統治論-(3)正義の尊重される都市justissima civitas-」(未発表)で締め括ろうと考えている。こうした都市論・市民論と比較できるそれ以前(中世前期)の典型的な都市・市民像はないものかと探している。その描き方は、古代からの構造物や制度の連続面の賞賛から、教会、キリスト教、保護聖人などの活躍と都市との関連で都市論を展開したものもあるが、本年度は帝国との関わりで都市の名を挙げようとしたパヴィアのHongrantiae Civitatis Papieについての紹介と一部翻訳は、岩波書店から出版される『世界史史料集第五巻』の中で公表される予定である。帝国との戦いや外交交渉の複雑な流れの中で自己を確立していく都市については、『史学研究』233号の論文「コンスタンツ和約考」で公表している。この論文は、皇帝に対して勝利を収めたイタリア諸都市が「コンスタンツ和約」を勝ち取ったかに見えるが、条約締結に至る過程を詳しく検討すると、皇帝の分断化政策の一貫でみる方が妥当であることや、しかし、実際には、支配の実態を検討すると帝国支配はそう簡単には貫徹されていないことも指摘している。
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Research Products
(2 results)