2002 Fiscal Year Annual Research Report
「書籍」史料にもとづく中世ヨーロッパ社会史的大学史研究
Project/Area Number |
13610456
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Research Institution | OITA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大嶋 誠 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (90108613)
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Keywords | 中世史 / 大学史 / パリ大学 / 書籍 / 書籍商 |
Research Abstract |
上記研究課題にもとづくは平成14年度の研究実績は以下の通りである。 上記研究課題は一つには「書籍商」(libraius, stationarius, librere)と中世パリ大学との関係を手がかりに,二つには「学寮」への書籍の寄贈者ないし遺贈者,さらには図書館利用者を手がかりに,中世パリ大学と当該期の社会と関わりを明らかにすることであるが,平成14年度の研究は,「書籍商」に関連する研究を中心に進められた。その成果は以下の通りである。 1.中世パリ大学と「書籍商」との関係は,1257年,1302年,1316年,1342年の文書などから明らかにされる。これらの史料から,大学が教師・学生の研究と勉学に必要な書物の入手を妨げる不正な取引を行うこと,誤りのある範本一分冊(pecia)の流布を禁じ,適正料金による範本-分冊の賃貸の実施を,「書籍商」に宣誓をもって要求し,宣誓拒否者をボイコットすることによって,「書籍商」を大学の一定の「監督下」に置いたことが確認された。 その一方で,「宣誓書籍商」は免税特権を享受した。すなわち,中世の大学が特権の一つに預かることができたのである。 このように,大学という知的営為を活動の中心に置く組織は,その活動に不可欠な役割を有する「職業集団」を「監督下」に置き,その職業集団は大学特権の一部を享受するという社会的関係が成り立っていたことが確認された。 2.1292年から1354年にかけてのタイユ税帳から,パリでは120ほどの書籍商が活動していたことが判明するが,彼らのうちごく少数(7名)は,筆耕,彩色絵師,製本師を兼ねるていたこと,また,12名の「書籍商」は「clericus」の肩書きを所持したことが確認された。
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