2002 Fiscal Year Annual Research Report
11世紀における修道院祈祷兄弟盟約から俗人フラタニティーへの変容過程の実態的研究
Project/Area Number |
13610459
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Research Institution | Hachinohe University |
Principal Investigator |
前山 総一郎 八戸大学, 商学部, 教授 (80229327)
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Keywords | 中世史 / 兄弟会 / フラタニティー / コルヴァイ / 修道院 / アソシエーション / ヨーロッパ / ネットワーク |
Research Abstract |
フラタニティー(fraternitas)という中世的人的紐帯研究について、修道士中心に比較的古く(8世紀)から広まっていた祈祷兄弟盟約から、12・13世紀において叢生した俗人中心のフラタニティー(兄弟会)への変容過程について実態的に解明しようとする本研究は、両者の移行形態であるコルヴァイ修道院領内の「信徒兄弟会」(fidelium frarternitas)に着目した。 本年度は昨年度におこなった、1350名の人名を掲載した史料「人名リスト」(Msc. I 132)の電子化・解析を基に、各信徒兄弟会団体の分析を以下3段階の手法でおこなった。 1)「人名リスト」と関連資料(Notae Corbeiensis)との関連についての史料検証をおこなった。結果、「人名リスト」の1350名が4つの「信徒兄弟会」団体の構成員であったことが判明した(Corvey 2団体、Goslar 1団体、Wulfelade 1団体)。 2)これを受けて、これらの団体と修道院(修道院長・修道院共住者団)との関係を、各規約および修道院機構をも確認しつつ解析した。その結果、4団体に共通して、(1)成員についての祈祷を修道士に委ね、教会施設費等を集め修道院に拠出していること、(2)兄弟会の成員のために記念ミサ(memoria)が特定の祝日に修道士によりおこなわれること、(3)祝祭日にあって貧者たちへの給施活動(elemosina)をおこなったこと、の三点が確認された。つまり修道院の祈祷活動を支えることを根底的趣旨とした結社団体であったとが分かった。 3)最後に、以上の成果を踏まえアソシエーション的観点から、俗人兄弟会形成との構造的連関の問題を見た。その結果、「信徒兄弟会」(11世紀末・12世紀初頭)が(1)俗人(信徒)の主体的形成によること、(2)拠点型結社(Ortsfraternitas)であること、(3)職業等から見て社会中層・下層等の多様な社会層から構成されていたこと、という特質をもつことが判明した。 以上により、「信徒兄弟会」が新しい人的ネットワークの型を踏まえ、12・13世紀に叢生する都市型俗人兄弟会と通底している(俗人の自主形成型・地縁型アソシエーション)ことがつきとめられた。
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