2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島と朝鮮半島の国家形成期における武器発達過程の考古学的比較研究
Project/Area Number |
13610468
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松木 武彦 岡山大学, 文学部, 助教授 (50238995)
|
Keywords | 弥生時代 / 古墳時代 / 武器 / 日韓交流 / 認知考古学 |
Research Abstract |
日本列島および朝鮮半島の国家形成期、すなわち紀元前後から紀元後6世紀頃の武器発達過程を巨視的に比較・相対化するために、平成15年度は、第一として、この両地域の武器の淵源であり、たえず影響を与えつづけた中国の武器の実態を明らかにするため、中国秦・漢〜隋・唐代にかけての武器を検討することを主眼に置いた。そのことを目的として、中華人民共和国陜西省の東北大学・陜西省考古学研究所・陜西省考古博物館などに赴き、各機関の協力を得て、陜西地域を中心とした上記各時代の青銅製武器・鉄製武器を実地検討し、データを入手した。そのことによって上記各時期における中国の武装様式・武器製作技術などの展開過程を整理し、中国中原地方を淵源とする日本列島および朝鮮半島の武装様式や武器製作技術の発展過程を相対化し、相互比較するための基準を得た。この基準によって両地域の武装様式・武器製作技術の比較作業に一部着手し、両地域の中国からの影響度は各地域・各時期によって強弱の脈動が認められるという予察に達した。 第二として、武器の発展過程の特質をより広い視点から相対化する理論的枠組の設定に着手した。これまで、武器の研究は、もっぱらその殺傷能力を中心とした機能的発展の過程を明確にすることが主眼とされてきたが、本研究では、その精神的・観念的側面が日本列島・朝鮮半島両地域の武器の形態や様式、およびその差異の形成に大きな影響を与えたと考え、そのメカニズムを明らかにすることを最終的な目的の一つとしている。この仮題に関して、本年度は、日本列島弥生時代後期の打製石鏃を対象として、その形態的特徴や変化のメカニズムに働いた文化的・観念的な要素を、認知考古学的視点の導入によって析出するという検討を行った。このような実践の一方で、機能主義的分析視点と認知考古学的手法とを組み合わせた方法論の策定も進めた。この方法論の整備によって、日本列島・朝鮮半島における武器発達過程の特質の比較を、従来とは異なる総合的な視点から行うことのできる理論的見通しを得た。
|