2002 Fiscal Year Annual Research Report
古墳時代後期の階層構造復原に関する研究-金銅装の鏡板の形態に着目して-
Project/Area Number |
13610482
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Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
藤田 奈美枝 (尼子 奈美枝) 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (20261216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅井 裕子 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (20250350)
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Keywords | 古墳時代後期 / 中央周縁関係 / 金銅装の馬具 / 鉄製の馬具 |
Research Abstract |
平成14年度においては、従来より筆者の行ってきた、馬具所有形態の類型と石室規模の相関関係からの検討を、地域を広げつつさらに深化させると共に、馬具の中でも特に轡と杏葉に着目して、形態的な比較を行なった。以下、その成果について記す。 1 馬具所有形態の類型と石室規模の相関関係から、後期古墳の階層性を地域ごとに比較した場合、(1)中央(畿内、特に大和)の卓越性、(2)周縁の多様性(大和以西(西日本)と東海以東(東国)の様相の違い)、(3)周縁における拠点的地域の存在、を指摘することができた。 3 馬具の中でも、特に轡(鏡板)の形態に、古墳被葬者の階層差が反映される場合が多いことを指摘した。すなわち、金銅装の鏡板を所有する方が鉄製の鏡板を所有するものより、階層的に上位であると言えた。 4 f字形鏡板付轡と剣菱形杏葉のプロポーションを比較した結果、同じ轡の左右のf字形鏡板付轡では、ほぼ同形のものが多かったが、異なる古墳から出土したものでは、形態差が大きかった。剣菱形杏葉では、同じ古墳から出土したものでは、ほぼ同形となるものと、異なるものの両方が認められた。また、異なる古墳から出土した剣菱形杏葉において、ほぼ同形といえるものが存在した。 今後も、以上のような検討の方向を、さらに深化させていきたい。とりわけ、筆者独自の検討方法である、馬具所有形態の類型と石室規模の相関関係という二つの基軸を含む方法は、馬具あるいは石室単独の検討では困難であった、地域を越えての比較を可能にし、中央周縁関係に関する一つの見解を提示することができたと考える。これに、馬具の形態的な検討からの成果も、より合致させていけるよう、さらに追究していきたい。
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