2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610498
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長島 弘明 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (00138182)
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Keywords | 建部綾足 / 伝記 / 文人 / 国学 / 漢画 / 片歌 |
Research Abstract |
1.建部綾足の絵画における業績を調査した。綾足は早い時期に画譜を刊行したことで知られるが、その中で最初の作である『寒葉斎画譜』について、従来は初版本の残存例が少なく、原態が不明であったのを、新たに複数の存外初版本を確認し、ほぼ原態を把握できた。また『建氏画苑』『漢画指南』についても、諸版の整理ができた。 2.肉筆画については、明和期・安永期の略画風の画賛で、未紹介のものを10点ほど新しく見出した。さらに密画についても、従来知られているものの他に、数点の新出資料を加えることができた。ただし、綾足の密画には、ほとんど年時の記載がない。画の成立年次の正確な考証は、次年度以降の課題である。 3.綾足の国学については、主として『万葉集』と『伊勢物語』に関する著作を調査した。『旧本伊勢物語』『詞草小苑』等の公刊された研究所の内容を検討するとともに、門人への講義の筆記録、門人の質問に答えた書簡なども精査し、県門の方法とはかなり異なった綾足の方法を明らかにすることができた。 4.宝暦期までの俳諧、明和・安永期の片歌の作品、ならびに俳論・片歌論を精読し、俳諧史上における綾足の業績の意味について考察した。伊勢派の系統の俳人として出発しながら、真淵流の国学(古学)の洗礼を受け、当事の芭蕉復興運動の範囲を逸脱して、古代の片歌を復興するに至る軌跡を、明らかにすることができた。
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