2002 Fiscal Year Annual Research Report
明治末期から大正期にかけての日本文学におけるドイツ思想・文化受容の意義
Project/Area Number |
13610504
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
林 正子 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (30198858)
|
Keywords | 文明批評 / 文化主義 / 生の哲学 / ドイツ新理想主義 / 国民文化 / 教養主義 / 森鴎外 / 近代日本 |
Research Abstract |
本研究課題のうち、本年度=平成14年度の主たる成果は、明治から大正期にかけての文明論・文化論が、近代日本のアイデンティティへの模索と考究のすがたを映じる鏡のような意昧をもち、文明評論の展開、文明批評の諸相に、近代日本の自己認識の実相と自己探究の潮流が投影されていることを論究したものである。ドイツ語論文"Von der Kulturerneuerung der Meiji-Zeit bis zum Kulturismus der Taisho-Zeit : Die Entwicklung der Kulturkritik im modernen Japan"では、明治末年、<文明>概念から<文化>概念が自律し区別されるようになった要因として、<生の哲学><ドイツ新理想主義>の哲学がドイツから移入されることによって、"Kultur"の翻訳語としての<文化>が確固として用いられたことを指摘し、人間生活の最高の目的を文化の向上に置き、文化価値の実現をめざしていこうとする<文化主義>の立場が、1910年代終り、大正期日本の知識人層に提唱されたのは、明治期における日本文明の進展についての自覚、国民文化確立の重要性の認識、ドイツ思想の受容による教養の練磨によるものであったことを論じている。本研究課題の成果のひとつとして、第12回ドイツ語圏日本学会(於ボン大学2002年9月30日〜10月3日)で発表した。 論文「松本清張文学の淵源と指標一テーマとしての<森鴎外>」は、日本文学におけるドイツ思想・文化受容の意義について論じることを目的としたものではないが、鴎外をテーマとした清張作品がそのドイツ留学体験の成果を記していることに言及しているので、本研究発表の1編として挙げた。また、本研究課題と関連する仕事として、書評「野村幸一郎著『森鴎外の歴史意識とその問題圏-近代的主体の構造』(晃洋書房2002年1月)」(「日本近代文学」2003年5月発行予定)があるので、併せて付記しておきたい。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 林正子: "松本清張文学の淵源と指標-テーマとしての<森鴎外>"岐阜大学地域科学部研究報告. 第12号. 239-258 (2003)
-
[Publications] HAYASHI, Masako: "Von der Kulturerneuerung der Meiji-Zeit bis zum Kulturismus der Taisho-Zeit : Die Entwicklung der Kulturkritik im modernen Japan"12.Deutschsprachiger Japanologentag in Bonn 2002. (印刷中). (2003)