2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610512
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
高城 弘一 大東文化大学, 文学部, 助教授 (90255977)
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Keywords | 陽明文庫 / 『大手鑑』 / 「小島切斎宮女御集」 / 粘葉装 / 付着鏡文字 / 古写経切 / 淡藍紙 / 「金塵縹紙金光明最勝王経切」 |
Research Abstract |
陽明文庫蔵『大手鑑』(国宝)には、伝小野道風筆「小島切斎宮女御集」(粘葉装C頁)が押されているが、第一行目行頭に「を(越)」、第五行目行頭には「ち(千)」が反転しているのが確認できる。これは稿者の提唱する「付着鏡文字」で、相手側頁(粘葉装B頁)の文字が移り写ったものと想定できるが、事実、この一葉は現存しており、第四行目行頭に「ち(千)」、第九行目行頭に「を(越)」の存するのが確認できた。また、『大手鑑』所収「小島切」は、一般の「小島切」と比して紙幅がやや狭い。これは右側の一行分が、前頁から続く和歌の下の句として存していたのであり、中途半端なものとして断ち落とされてしまったものである。 陽明文庫蔵『大手鑑』には、伝藤原佐理筆古写経切が連続して二葉押されているが、第一葉目に所収する「淡藍紙古写経五行切」の方については、先達の報告において、未詳古写経の断簡・平安時代の書写として取り扱われてきた。今般の研究により、これを大覚寺蔵伝弘法大師筆「金塵縹紙金光明最勝王経切」(天平時代)のツレと認定し、金塵を存する料紙を使用していると判明した。あわせて、書写内容から推して、三部分(三行・一行・一行)を寄せ継いで一葉に見立てていることも判明した。また、架蔵手鑑『筆鑑』に、極札を存しないものの、一連の「金塵縹紙金光明最勝王経切」のツレと認定しうるものが二葉も存することが判明した。それらは、伝藤原佐理筆淡藍紙古写経切第三部目一行と直接続いたり、数行前に該当する箇所などであったりして、極めて重要といえる。以上のように、大覚寺蔵伝弘法大師筆「金塵縹紙金光明最勝王経切」・陽明文庫蔵『大手鑑』所収伝藤原佐理筆写経切・架蔵『筆鑑』所収筆者未詳古写経切二葉は、それぞれ単独でしかなかったのであるが、ここにツレとして線で結ばれたことになる。
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Research Products
(2 results)