2001 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代中期におけるメディア共同体の形成と出版文化ネットワークの研究
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13610524
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
西島 孜哉 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (20102808)
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Keywords | 西鶴 / 出版メディア / 俳諧 / 松岡恕庵 / 九如館鈍永 / 分化サークル |
Research Abstract |
「西鶴と出版」においては、井原西鶴の俳諧活動と出版メディアの相関について考察した。西鶴の生玉万句興行以前の俳諧活動については、その俳諧書への入集の少なさから、俳壇における位置を重くみないのが一般的であるが、出版との関わりからは見直さねばならない。『生玉万句』の出版については諸説あるが、西鶴が出版メディアを獲得し、自己のメッセージを広く外に向って発信したものであった。京都の俳諧書出版が内に向けた写本的なものであったのに対して、新興の大坂の俳諧書出版、特に西鶴のそれは本来的な出版機能を前面に打ち出すものであり、外向けの機能をもち、全体的な構成を整えたものであった。西鶴の矢数俳諧も同様に自己のメッセージの発信であり、従来からいわれる即興的なものではなく、周到な準備と全体構成をもったものであった。そのような出版メディアの本来的な機能に着目するところに西鶴の活動、その周辺の大坂の人々の活動があったのである。西鶴の浮世草子『好色一代男』はそのようなメッセージの発信として、俳諧活動からつながるものとして捉えるべきである。 「松岡恕庵玄達の著述」においては、恕庵の著述の出版事情について考察した。江戸の中期になっても京都においては出版メディアを自己の活動の中に位置づけることはかなり困難であった。博物学を主とした恕庵は生前その著述を出版というかたちで公開していなかった。恕庵の著述はその没後に門人や書肆、さらに京都の文化サークルを構成する人々によって、外向けに発信され、大衆化がはかられたのである。複数の文化的な書肆、多くの知識人が関わっているが、特に仁和寺の侍である狂歌師九如館鈍永の働きが大きく、京都の文化サークルの特徴的なあり方が明確である。
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Research Products
(2 results)