2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610528
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
児玉 竜一 独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所, 芸能部・演劇研究室, 研究員 (10277783)
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Keywords | 歌舞伎 / 歌舞伎台帳 / 台本 / 大惣 |
Research Abstract |
第三年度である本年は、おもに京都大学付属図書館、阪急学園池田文庫、大阪府立中之島図書館、早稲田大学演劇博物館、皇學館大學神道博物館に所蔵される台帳の調査を進めた。 書誌調査とあわせて台帳の収蔵状況の調査成果をもとに、国立劇場芸能部における復活作品検討委員会に加わった。 大惣旧蔵の歌舞伎台帳は現在、京都大学付属図書館と東京大学文学部国語研究室に分かれて収蔵されているが、その書誌的情報と筆跡を中心に調査した。とくに特徴的な筆跡をふくむ、「七五三」と署名のある一群の台帳を重点的に閲覧し、京都大学と東京大学に分けて収蔵された大惣旧蔵本の副本作成の状況を、筆跡資料の収集をもとに検証した。 筆跡をめぐっては、大惣本中の「七五三」署名本において、特徴的かつ頻出度の高い筆跡が、早稲田大学演劇博物館、阪急学園池田文庫、皇學館大學神道博物館に所蔵される台帳に、それぞれ散見され、その表紙の記載形式などに共通性のあることを見いだした。従来、「七五三」署名本は、筆跡等から大惣の筆耕者の手になるものとも考えられてきたが、昨年度成果と併せて最も頻出度の高い二種類の筆跡が、ともに貸本屋でない者に所蔵された台帳に確認された。 皇學館大學神道博物館所蔵台帳は、貸本業の手元にあった台帳であるが、そのコレクションの中には、千束屋が入手する以前に劇壇内部にあったと思われる徴証を、いくつか見いだすことができた。伊勢のレンタル業者でありながら、三都を中心とする中央劇壇の台帳を所持している事実に加え、一部の紙背文書として、狂言作者の反古とおもわれる狂言作成過程での下書き、書抜、人物案、または台帳を借用するむねの書簡などを見いだした。こうした資料は、きわめて珍しく紙背文書でもあることから、撮影についての交渉を継続しているが、「七五三」署名と、書簡の宛名「〆助」とをつなぐ極めて重要な資料として位置づけたいと考えている。
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