2003 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀アイルランドの表象研究(「ナショナリズム」とアイデンティティー)
Project/Area Number |
13610561
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
内海 智仁 岐阜大学, 地域科学部, 助教授 (00185050)
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Keywords | 表象 / アイルランド / ナショナリズム / 帝国 / アイデンティティー / 19世紀 |
Research Abstract |
本研究は、「大英帝国」とアイルランドとの文化的な対立がアイルランドの文学的・文化的な「ナショナリティ」を創り上げてゆく過程を、19世紀イギリス文学・アイルランド文学に現れるアイルランド(人)像を分析することにより、明らかにすることを目的としている。 3年間の研究期間の最終年度である本年度は、これまでの作業を継続し、発展させた。すなわち、19世紀イギリス文学に現れるアイルランド像と、19世紀アイルランド文学に現れるアイルランド像とを、「ナショナリズム」の観点から、文学作品のテクスト(風刺漫画などの図像も含む)に即して綿密に分析した。イギリス文学では、アーノルド、ジョージ・エリオット、ディズレイリ、スコットら、アイルランド文学では、トマス・ムア、ブーシコー、イエィツ、シングらである。 ユナイテッド・アイリッシュメンの蜂起、世紀半ばの大飢饉、フィニアンによる独立運動、そして世紀終わりのパーネルの活躍と失脚、といった19世紀のうねりは、アイルランド文芸復興運動と相俟って、20世紀のアイルランド文学の隆盛、イースター蜂起、独立戦争へとつながってゆく。 19世紀イギリス文学に現れるアイルランド像(ステレオタイプ)と、19世紀アイルランド文学に現れるアイルランド像(自己像)という両者が、イギリス/アイルランドの文化・政治・社会状況との関係の中で、互いに深く影響・作用していること。まさにそうした磁場において、アイルランドの「ナショナリズム」やアイデンティティーの形成・創出がなされたこと。その一端を、ロバート・エメットなどの具体例に即して明らかにすることができた。
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