2001 Fiscal Year Annual Research Report
現代アメリカ文学における「アメリカン・サブライム」の表象とアウラの発現に関する研
Project/Area Number |
13610569
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
渡辺 克昭 大阪外国語大学, 外国語学部, 助教授 (10182908)
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Keywords | 現代アメリカ文学 / 崇高美 / アウラ / スペクタクル / メディア / ドン・デリーロ / 広告 / テクノロジー |
Research Abstract |
本研究は、入植以来、アメリカ人の集合的無意識を特徴付けてきた、「アメリカン・サプライム」、すなわち雄大で崇高なる新大陸の景観に表象される神話的なアメリカ像への固執が、テクノロジーの発展とともに二十世紀アメリカにおいて大胆な変容を遂げつつも、依然としてアメリカ的無意識を根強く規定し続けているという観点から、現代アメリカ文学における「崇高美」の表象を明らかにするとともに、そこから生じる新たなアウラの発現を詳細に分析することを目的としている。 この目標に向けて、本年度は、研究計画通り、本研究の基盤をなす基礎資料の作成を最優先課題とした。具体的には、時代から十九世紀前半、十九世紀後半から二十世紀前半、そして二十世紀後半という三つの時期を設定し、各時期の文学作品から「アメリカン・サプライム」の表象をできるだけ網羅的に抽出し、その変遷の軌跡を通時的に描く作業から着手した。それと並行するかたちで、共時的視点に立ち、文学の領域のみならず、表象流通と密接な関わりのある視覚芸術、広告、メディア研究などの成果を積極的に取り入れながら、テクノ・ユフォリア並びにテクノ・アングストという、テクノロジーをめぐる相矛盾した表裏一体の感覚の解明に取り組んだ。 その結果、逆説的ながら、これまで崇高とされてきたフロンティアの大自然とは対極に位置するテクノロジーとメディアが可能ならしめた様々なヴァーチャルな現象、並びに消費文明から必然的に発生する廃物などに、ポスト・ベンヤミン的なアウラが生じ、そちらへとアメリカ的「崇高美」の表象が巧妙にずらされていく可能性が高いことが判明した。 本年度における研究成果は、論文「廃物のアウラと世紀末-封じ込められざる冷戦のアンダーワールド」『冷戦とアメリカ文学』(世界思想社)、「広告の物たちの国で-ドン・デリーロとスペクタクルの日常」『Ex Oriente』、並びに第45回日本アメリカ文学会関西支部大会フォーラムにおける研究発表「メディア・ジェンダー・パフォーマンス-The Body Artistにおける時と消滅の技法」を参照のこと。
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