2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610572
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
飯田 操 広島大学, 総合科学部, 教授 (80116772)
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Keywords | イングリッシュネス / エリザベス朝 / シェイクスピア / チューダー朝史劇 / ホリンシェッド / 肖像画 / 王室紋章 / 英国古地図 |
Research Abstract |
エリザベス朝英国におけるイングリッシュネス(Englishness)について、特にウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)の作品を中心に考察する本研究において、チューダー朝史劇の考察は重要である。本年は、その粉本およびシェイクスピアが参考にしたと思われる歴史書などの資料を渉猟するとともに、関連するさまざまな資料のうち、ウィリアム・カムデン(William Camden)の『ブリタニア』(Britannia)やマイケル・ドレイトン(Michael Drayton)の『ポリーオルビオン』(Poly-Olbion)、当時の英国地図などについて必要資料を収集した。 シェイクスピアのテキストについては、『リチャード二世』(Richard II)におけるゴーント(Gaunt)の有名な愛国的な台詞をはじめとして、『ヘンリー四世』(Henry IV)を経て、『ヘンリー五世』(Henry V)に連なるチューダー朝史劇にあらわれるイングランド中心主義とその背景について考察した。特に当時のイングリッシュネスのあり方において示唆的である『ヘンリー五世』のクウォート版とフォリオ版を比較検討し、ラファイアル・ホリンシェッド(Raphael Holinshed)の『年代記』(Chronicles)の記述などを参照しながら、そのテキストにあらわれた当時のイングランド人の国家意識についての分析をすすめた。 並行してエリザベス女王の肖像や王室紋章についての資料の収集に努め、その扱いの変化を考察する作業に入り、これらの視覚文化に属するものとシェイクスピアのテキストをはじめとする言語文化との関連性、これらの事物による支配者層の民衆操作の側面と民衆の側からの体制批判の側面等について考察を始めた。
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