2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610572
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
飯田 操 広島大学, 総合科学部, 教授 (80116772)
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Keywords | イングリッシュネス / エリザベス朝 / シェイクスピア / チューダー朝史劇 / ホリンシェッド / 肖像画 / 王室紋章 / 英国古地図 |
Research Abstract |
本研究は、エリザベス朝英国におけるイングリッシュネス(Englishness)について、特にウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)のチューダー朝史劇作品を中心に考察するものであるが、本年は、主に『ヘンリー五世』(Henry V)に描かれたブリテンとしての連合体制の実態と、そこに存在するイングランド中心主義について考察した。関連して、イングリッシュネスのひとつの表れである英語に対する関心の増大を取り上げ、エドマンド・スペンサー(Edmund Spenser)の著作や、ジョージ・パトナム(George Puttenham)の『英語の詩学』(The Arte of English Poesie)などを参考に当時の自国語意識の高揚を具体的に考察した上で、シェイクスピアのテキストにあらわれる英語意識について考察した。また、ジョン・ディー(John Dee)の『完全なる航海術』(The Perfect Arte of Navigation)やクリストファー・サクストン(Christopher Saxton)の英国地図のタイトル・ペイジに描かれたエリザベス女王の肖像など当時のエリザベス女王称揚のさまざまな形態に言及し、ロイ・ストロング(Roy Strong)の一連の著作における指摘を参考にしながら、エリザベス女王の治世における一連のチューダー朝史劇、特に『ヘンリー五世』の執筆および上演の意味について考察した。また、当時のイングリッシュネスの考察において大きな意味をもつ、『ヘンリー五世』のクォート版とフォリオ版の二つの版の比較検討を厳密に行い、G・B・ハリソン(G.B.Harrison)の『エリザベス朝日誌』(An Elizabethan Journal)などを参考にしながら、当時の社会状況の把握に努めた。 目下、この問題を言語文化や視覚文化を包含する大きな文化状況のなかで有機的にとらえることを念頭におき、まとめの作業にかかっている。
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