2001 Fiscal Year Annual Research Report
『野生の果実』を中心とするソロ―自然史作品の現代的意義について
Project/Area Number |
13610573
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 詔子 広島大学, 総合科学部, 教授 (60071536)
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Keywords | ソロー / アメリカ自然史 / ニューイングランド地誌 / 果実 / ネイチャーライティング / エコクリティシズム |
Research Abstract |
本研究「『野生の果実』(1859-1861)を中心とするソロー自然史作品の現代的意義について」は、最近テキスト化された最晩年のヘンリー・デーヴィッド・ソローの自然史作品『野生の果実』(Wild Fruits,執筆1859-1861,出版ノートン社、2000年1月)の細部をまず解明し、エコクリティシズム(ecocriticism=エコロジー的文学批評)の方法で研究し、ソローの他の作品との関係、自然史の歴史のなかでのソロー自然史の特質の解明をとうして、『野生の果実』の現代的意義を評価することを目的とする。本年度は以下の4つの研究成果があった。 1.『野生の果実』をまず日本語に訳出し、テキストに引用されている、多くの自然史文献の出典を調査し、このテキストの意義を論じた序文及び、訳注と編注をつけ、2002年5月松柏杜より、出版する。この間米国ソロー研究所ディーン教授と緊密に連絡し、語句や出典について意見交換しながらすすめた。邦題はこの作品を中心とするソローの現代的意義を明らかにするため『野生の果実-ソロー・ニューミレニアム』とする。又19世紀のアメリカ社会時代背景考察のため、"Poe, Faulkner, Gothic America"を刊行した。 2.次に『野生の果実』全般の批評的問題と、テキストに頻出するアメリカ先住民とソローのアメリカ先住民研究との関係分析は、「野生果実の喪失と復活」と題して論文とし、アメリカ文学主要作家の現代的意義を探る『アメリカ文学ミレニアムI』(pp.268-290)に収録した。 3.『野生の果実』に表明されるエコロジー思想の研究を、前作の『種子の拡散』と比較考察するレヴューエッセイ「ソローの晩年と「種子の拡散」散歩者の共感的ヴィジョン」と題して刊行した。 4.『野生の果実』をより広いネイチャーライティングとエコクリティシズムの観点から考察するため、ビュェルの近著についてのレヴューエッセイ"On Writing for an Endangered World"(『絶滅危機の世界のための文学』論)を刊行した。
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[Publications] 伊藤 詔子: "Poe, Faulkner, Gothic America"フォークナー研究(インターネットマガジン). 第3号. (2001)
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[Publications] 伊藤 詔子: "野性の果実の喪失と復活"アメリカ文学ミレニアムI(南雲堂). 168-190 (2001)
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[Publications] 伊藤 詔子: ""On Writing for an Endangered World""英語英文學研究(2001). 第46巻. 45-49 (2001)
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[Publications] 伊藤 詔子: "ソローの晩年と「種子の拡散」散歩者の共感的ヴィジョン"ソロー研究論集. 第28巻. 45-49 (2001)
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[Publications] ヘンリー・ソロー著, 伊藤詔子翻訳と注(共訳者 城戸光世): "野生の果実-ソロー・ニューミレニアム"東京 松柏社. 1-323 (2002)