2001 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文学における反黄禍論の源流―ユーラシアンの書いた東洋
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13610584
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
宇澤 美子 (富島 美子) 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (00164533)
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Keywords | オリエンタリズム / 異文化交流 / オノト・ワタンナ / ユーラシアン / 黄禍論 / 人種ステレオタイプ / エスノグラフィ / 浦島伝説 |
Research Abstract |
本年度は、オノト・ワタンナ(ウィニフレッド・イートン・パプコック・リーヴ)の作品収集と読解を進めた。ロングの「蝶々夫人」やロティの「お菊さん」など、同時代に爆発的な人気を集めた男性作家のオリエンタリズム文学を下敷きにしながらも、西洋男性の性的支配に都合がよい待つだけの受け身の女とは異なるいわば「あたらしい女」として、ワタンナは独自の日本女性像を作り上げた。なかでも、特に興味深かったのは、初期の頃の複数の短編において、ワタンナが「文化翻訳者」という女性作家のあり方を模索していたことである。「翻訳・翻案」は、ジェンダー・階級・人種的境界線を越えるための手段であり、ユーラシアン作家ワタンナの存在意義そのものとも映る。また初期の頃に様々な雑誌に発表していた、エスノグラフィックな日本関係記事を参考に、ワタンナが得ていた日本(人)についての情報のありようを調査した。彼女の日本についての情報はおそろしく広く(その分往々にして浅いが)、彼女が浦島伝説を、西欧のウンディーネ伝説とあわせ、浦島太郎から後に残される乙姫の物語へと「翻案」し、出世作「日本鶯」を書いていたことをつきとめ、現在そのことについての論文を執筆中である。 調査のための基礎資料の購入に本研究費は大変有益であった。購入した書籍は都立大学図書館において公共の用に付される。また設備備品費で購入したノート型パソコンは、他大学図書館や資料館を閲覧する時にデータを入力するために大変役立った。 今年度予定していたカルガリー大学ワタンナ資料の調査研究は、テロ事件以後の航空機事情の悪化のため、来年度に延期した。
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