2002 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文学における反黄禍論の源流―ユーラシアンの書いた東洋
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13610584
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
宇沢 美子 (富島 美子) 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (00164533)
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Keywords | オノト・ワタンナ / 黄禍 / ジャポニズム / 在米日系人 / ウォラス・アーウィン / ヨネ・ノグチ / エトウ・ゲンジロウ / 異文化交流 |
Research Abstract |
14年度は.カルガリー大学図書館(カナダ)においてウィニフレッド・イートン・リーヴ・ペイパー(オノト・ワタンナ資料)の調査研究を行った。今日他所ではほとんど入手不可能な作品および書評・記事を収集することができ、ワタンナという作家の創作・受容の実態を把握するための貴重な情報を得た。 従来、ワタンナの日系偽装には、欧亜混血の作家自身、白人の編集者・出版社、ジャポニズム消費に走る白人女性読者の三者が関わっていたと考えられてきた。それに加える形で、今回の資料調査では、ワタンナの日系作家ぶりに、在米日系新聞の一紙が関与していたことも判明した。その日系紙はヨネ・ノグチとともにワタンナを日系作家モデルとして評価し、しかもその際にそれまでアメリカのジャーナリズムのなかではみられなかった、在米日系人向けヴァージョンのワタンナ伝(たとえば、本名は「高橋琴子」といい・・・」)を付け加えていた。ワタンナにとってこうした新聞記事が彼女の日系偽装を権威づけるものとして大切だったなら、逆に在米日系社会にとってはワタンナの活躍はきたるべき二世たちの役割モデルとして貴重だったことが了解できた。 さらに今年度は、日本に帰国後ワタンナの日系偽装を完膚無きまでに批判したヨネ・ノグチ、ワタンナの日系偽装を事実上支えた有田出身の挿絵画家エトウ・ゲンジロウ、(もう一人の疑似日系作家)ウォラス・アーウィンのスラップスティック路線とワタンナのロマンス路線を掛け合わせた無声映画<ハシムラ・トーゴー>(1917、主演早川雪洲)についても研究を広げた。 研究成果の一部を、立命館大学で開催されたモダニズム研究会(2003年1月)、早稲田大学で開催されたアジア系アメリカ文学会例会(同年3月)において口頭発表した。
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