2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610591
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
島村 礼子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (80015817)
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Keywords | 語彙化 / デフォルト接辞 |
Research Abstract |
『言語研究入門--生成文法を学ぶ人のために』で私の執筆した「第7章 形態論2」では、語彙化に関して屈折形態論と派生形態論の相違を考察した。屈折形態論では、例えば規則動詞の過去形を生成するには-edというデフォルトの屈折接辞を動詞の基体に付加する規則が適用され、この規則はきわめて生産的である。一方、派生形態論においては、日本語の「-さ」はきわめて生産的であり形容詞に付加され常に「性質・状態・程度」を意味するデフォルト接辞であるが、それに対して「-み」のついた派生語は「性質・状態・程度」の意味から多少なりとも逸脱していて意味が語彙化されているものがかなりの数存在する(例:「楽しみ」「深み」)。他に、「-さ」と「-み」の違いとほぼ並行的に扱うことのできると考えられる接尾辞としては、英語の-nessと-ityがある。したがって、派生形態論においては、屈折形態論の場合と同様、デフォルト接辞は存在するが、しかしデフォルトではない接辞に比べると数はずっと少なく例外的である、と結論されよう。 他に、現在"Some Remarks on Lexicalized Phrases"というタイトルで、句の語彙化についてのペーパーを準備中である。語彙化された句(の一部)(例えばafter the party(mess), cost of living(increases))の存在は、以前から語彙部門と統語部門のインターフェースに関して問題を投げかけてきた。上記のペーパーでは、語彙化された句は語彙部門で生成されるのではなく、統語部門で生成される様々な形の句のうち比較的長さの短い一定の形をした句があらかじめ語彙部門にリストされており、いわば句の形をしたいくつかのテンプレートがあらかじめ語彙部門に用意されていて、それらのテンプレートを利用して語彙化された句が形成されると考えるべきである、と上記の論文では結論づけている。
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Research Products
(1 results)